10月31日の火災で建物の多くが焼失した世界遺産・首里城(沖縄県那覇市)の再建を支援するため、兵庫県丹波篠山市にある国史跡「篠山城大書院」が施設内に募金箱を設置し、寄付を呼び掛けている。大書院もかつて火災で焼失し、市民の寄付などをもとに再建された歴史を持つ。同県姫路市の姫路城でも募金が始まっており、”城つながり”で支援を行う同施設は、「首里城も篠山城も地元の人たちにとっては心のよりどころ。それがなくなることの悲しみは痛いほどわかる」と言い、「寄付に協力してもらうことを通して、支援とともに文化財の大切さや火災予防の重要性も感じてもらえたら」と呼びかけている。
募金箱は出火翌日の今月1日から設置。来年3月末まで受け付け、那覇市に送る予定という。
首里城と同じ「日本100名城」や「全国城郭管理者協議会」に籍を置いているが、今回の募金は篠山城単独での支援。熊本地震で熊本城が被災した際も募金活動を行っており、「微々たるものだが再建への資金はもちろん、全国の城が一体となって支援する機運につながれば」と計画した。
首里城は琉球王朝の王城として13世紀末から14世紀に築城され、太平洋戦争中の昭和20年(1945)にはアメリカ軍の攻撃によって全焼するなど、過去4度の火災に遭っている。
一方の篠山城は関ヶ原の合戦に勝利した徳川家康が慶長14年(1609)に大坂城の包囲と西国大名を抑えるために築いた城。明治維新後の廃城令を受け、ほとんどの建物が取り壊された。
唯一、当時のまま残っていた大書院だったが、昭和19年(1944)、失火により焼失。しかし、昭和後半に入り、住民から復元の機運が高まり、平成12年(2000)に大書院が再建された。
かかった費用は約12億円で、うち約3億円が市民からの寄付。住民運動は盛り上がりを見せ、97年の本紙によると、地元の高齢女性が空き缶を拾い集めて約70万円を寄付するなど、市民の熱い思いが復元の原動力になった。
ともに火災が起き”復活”を果たしている城。篠山城跡を管理する一般社団法人「ウイズささやま」の廣岡和哉さん(38)は、「首里城火災の一報を聞き、ひとごととは思えなかった。自分たちも日ごろの管理など身が引き締まった」と言い、「火災の原因ははっきりしていないが、近年、文化財に対するマナーやいたずらが問題になっている。文化財は昔の人が作り、これまで維持や復元に尽力した人がいて、未来の人にもつなげなければならないもの。そんなことをもう一度、みんなで考えるきっかけになれば」と話している。