妊婦専用の救急車導入を検討 中核病院の分娩休止受け 不安解消や安全な出産目指し

2019.11.01
ニュース丹波篠山市地域産科問題

神奈川県湯河原町で導入されている「マタニティサポートカー」(湯河原町提供)

兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センター産婦人科の分娩休止問題を受け、同市は妊婦専用の救急車「マタニティサポートカー」の導入を検討している。神奈川県湯河原町が昨年度から全国で初めて導入しているものを参考にし、分娩休止を受けて妊婦の間に広がっている不安の解消や、より安全な出産を目指す施策の一環として検討。同センターは来年3月末をもっての分娩休止を決めており、酒井隆明市長は、「丹波篠山市で導入できるかどうか、早急に検討したい」と、来年4月からの導入に前向きな姿勢を示している。

湯河原町で導入しているサポートカーは、おなかの張りや破水など出産のきざしが見られたり、出産予定日になったときなどに利用できるもの。事前に制度に登録した妊婦がかかりつけの産科医に電話。医師が必要と判断した場合、救急隊員が消防署にあるサポートカーで出動し、かかりつけの医療機関まで無料で搬送する。緊急の場合は赤色灯を回し、サイレンを鳴らしての走行が可能という。

車両は1台で、機材を合わせた費用は約1000万円。通常の高規格救急車の3分の1程度の費用ながら、ゆったりとしたスペースと分娩に対応できる機材を搭載している。昨年度、同町では妊娠届者数92人に対し、83人が登録。35人がサポートカーを利用した。

サポートカー導入案は、28日に丹南健康福祉センターで開かれた「産科充実に向けての検討会」(委員長=酒井市長)で示した。

導入した場合、市消防本部での運用となるため、酒井市長は、「消防職員も人数はぎりぎり。仮にこの仕事が増えた場合には、職員数も検討しないといけない」としつつも、「医大の分娩が休止する4月以降で、すぐに取り組める事業。早急に検討する」とした。

医師の委員からも、「救急車ならば自分で行くよりも10分は早いし、冬や夜中でも妊婦は安心できる。市が設置した『お産応援窓口』の助産師が同乗できれば、妊婦も救命士も安心では」と評価した。

検討会ではほかに、これまでの会議で委員から出た今後の分娩体制の検討案が出された。

市は市立の産科診療所や母子健康センター(助産所)の建設、産科医の確保などに必要な具体的な費用を、先進地の事例とともに報告。診療所や助産所を建てる場合には施設建設費だけで4億5000万円が必要になることや、産科医、助産師などの人件費と分娩や産後ケアによる収入を考えると、いずれも年間1600万円(助産所)から8000万円(産科診療所)の赤字になると試算した。

産科診療所の先進地として黒字となっている山梨市立産婦人科医院が紹介されたが、委員からは、「特異なケース。丹波篠山の実情に合う施設を考えないといけない」などの意見が出た。

また、「サポートカーは良いが、本来は地域の産科をどうするかが問題。丹波篠山が産みやすい、住みやすいまちになれば、人口を増やすことにもつながる。サポートカーと施設を両輪で考えないといけない」などの声もあった。

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