光秀ゆかりの山城にアルミ製階段 「景観損なう」登山客は違和感 補修工事の市「安全確保と遺構保護」

2019.12.23
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黒井城跡がある山頂に設置されたアルミ製階段 =2019年12月14日午前7時43分、兵庫県丹波市の黒井城跡で

戦国時代、明智光秀による丹波国平定戦で、激戦の舞台となった兵庫県丹波市の黒井城。現在は国指定史跡となり、雲海のスポットとして人気の山城跡だが、今秋から同市が進める補修工事に伴い、城跡がある山頂に市がアルミ製の昇降階段などを設置したことをめぐり、同城跡への登山愛好家らが「景観が損なわれている」と戸惑いの声を上げている。施工がしやすく、耐久性があることからアルミ製を採用した市は、市民からの違和感は聞いているとし、「アルミ製階段に色を塗るなど、景観になじむよう対応を検討したい」と説明した。階段の設置は登山客の安全確保や遺構保護が目的。「今の城跡の状態のまま、後世に伝えていく使命がある」と理解を求めている。

 

市は遺構保護と観光資源活用で板挟みに

今なお石垣が残る黒井城跡

市の「史跡黒井城跡補修工事」で、文化庁の補助を受けて施工。登山道の補修や、山頂を中心とする遺構の保護にも取り組む。工事は来年1月10日までを計画している。市によると、遺構の土塁が登山客の踏圧で、土が減り岩が見えるなど「裸地化」が進んでいる。遺構が傷んだり、崩れる危険があるとして、東曲輪内の坂道と、三の丸から二の丸への部分、二の丸から本丸に通じる石段部分の計3カ所に階段を設置した。

「応急的な設置」としつつも、「遺構調査をした上で補修に取り組むが、調査の時期は未定」とし、階段の撤去時期は決まっていないという。

頻繁に同城跡に登っている男性(69)は、「残念どころの話ではない」と言い、「丹波市として黒井城跡をPRしている中で、観光面でもマイナスしかない。明らかに人工的なものを設けるのはいかがなものか」と嘆く。同じく同城跡への登山を楽しむ男性(76)は「遺構を守らないといけないことは分かる」と理解を示しつつも、「それにしても格好が悪い。他府県から訪れた人もがっかりしていた。もっとやり方があるのではないか」と話す。

市教育委員会は昨年7月、「史跡黒井城整備基本計画」を策定。市によると、2年前に「続日本100名城」(日本城郭協会主催)に同城跡が選定を受けたことや、昨年にNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放映が決まり、登山客が急増。今後も多くの来場が予想されることから、登山者への安全対策と遺構保護を進めている。

他には、石垣周辺に立ち入らないようロープを張ったほか、今後は、本丸と二の丸の間にある「小曲輪」の石垣の崩壊防止の目的でポリエステル製ネットを張る予定。いずれも石垣の専門家らの意見を聞いたり、他の城跡で採用されている工法を参考にした。

市は、20日の市議会総務文教常任委員会で、「遺構が壊れていくのを放置することはできない。一方で、大河ドラマの放映など地域が盛り上がっている時期に、遺構調査による入山禁止はできない」と、保護と観光資源活用との板挟みにあることを説明した。

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