3月末で産婦人科の分娩を休止する兵庫県丹波篠山市黒岡の兵庫医科大学ささやま医療センター(片山覚院長)と神戸市北区の済生会兵庫県病院(山本隆久院長)がこのほど、産前産後の周産期医療に関する連携協定を締結した。同日、済生会病院で会見した片山院長は、「以前から済生会とは連携しており、たくさん患者をお願いしてきた。分娩は休止するが、地域の人に安心な体制をとっていることを理解してもらうため、協定という『見える形』をとった」と説明した。
両病院間の距離は約40キロ。高速道路を使用した場合、通常約40分で到着する。
協定内容は、医療センターで健診を受けている妊婦が、済生会病院での分娩を希望した場合、同病院で分娩と分娩前後の医療を提供。両院で診療情報を共有しながら、妊婦の希望に応じ、産後ケアは医療センターで行うこともできる。
また、医療センターの産科医や助産師が済生会病院に赴いて出張診療を行う「オープンシステム」も導入。同病院の産科がオープンシステムを導入するのは初めてで、診療のみか、分娩も行うかは検討中という。
県の「地域周産期母子医療センター」(周産期の高度医療を常時担う機関)に指定され、NICU(新生児特定集中治療室)なども備える済生会病院の産科は、医師6人、助産師33人の体制。年間約500件の分娩を扱い、過去には約700件を扱っていた実績もあることから、協定の発効で従来から受け入れてきた丹波篠山からのハイリスク妊婦だけでなく、ローリスク妊婦も増加したとしても、受け入れる余力はあるという。
一方の医療センター産婦人科は、医師2人、助産師5人の体制。年間120件前後の分娩を扱ってきたが、産科医不足や医師の働き方改革によって分娩の維持は困難として、休止を決定した。
これまでから同センターで出産予定の妊婦に異常がみられた場合は、同病院などに搬送してきた。同病院によると、同センターからの緊急母体搬送は例年5件ほどあるという。
会見で山本院長は、「昨今の医師不足、働き方改革による産科の集約化は避けられない。地域周産期母子医療センターとして果たすべき役割は大きく、今後もますます機能を充実させて役割を果たしていきたい」とし、「この協定は今後の方向性を示す象徴となる」とした。
片山院長は、「根底にあるのは妊産婦に安心で安全な周産期医療を提供して地域に貢献すること。近くで全てが完結できることを望まれる気持ちがあることは重々承知しているが、時代は変化しており、レベルの高い医療を提供するためには、より設備と人の整った病院との連携が必要ということを理解願いたい」と話した。
同センターは今後、近隣市のほかの病院とも同様の協定を締結していく方針。