91歳「職人」茅葺き携わる 「ボチボチと」茅刈り作業 マイペースで「お小遣いに」

2020.03.06
ニュース丹波市地域地域

作業の合間に一服する久下さん=2020年3月2日午後2時39分、兵庫県丹波市内で

農業の傍ら、茅葺きに携わりおよそ75年になる、兵庫県丹波市の職人・久下貞男さん(91)が、冬から春の仕事、茅刈りに励んでいる。2メートル以上ある茅を鎌で刈り、わらで束ねる作業。「この年齢では屋根の葺き替えはできないけれど、これならボチボチできる」と、クッションの良い茅に腰掛け、休憩しながらマイペースで作業している。

過去には文化財級の葺き替えにも従事

鎌で刈った、2メートル以上ある茅を束ねやすいようにまとめる久下さん

75年ほど前、地域に職人が5―6人おり、教えてくれる先輩に付いて、15―16歳から茅葺きに従事した。寺社建築会社の仕事で、全国の文化財級の建物の葺き替えに携わったほか、地元寺院の葺き替えも手掛けた。数年前から屋根にはのぼらなくなったが、茅刈りは続けている。

草刈り機で刈ると倒れる方向が不均一で、長い茅をそろえるのにかえって手間がかかるため、2メートル以上ある茅を抱きかかえるようにして鎌で手刈りし、わらなどで結束する。

茅の量は、結束するわらの長さ「尺」で決める。ひと抱えほどを表す「一把」という数の単位は、人によって量にバラつきが出るため、「尺」でそろえる。「三尺締め」にすると、7―8キロになる。ぼちぼち作業し、1日に7―8把こしらえる。枯れてからでないと刈れないので、冬場の仕事になる。

日ごろから車を運転しながら茅のありかを探している。「茅は見つかっても、土地の所有者を見つけるのがなかなか」と笑う。「古い茅は、ボロボロなので、新しい茅と混ぜてはいけない。刈ってやると翌年もちゃんと生える。その年に生えた茅だけを使う」と言う。

山梨や岡山が産地だが、自家調達すると材料費が抑えられる。「知り合いが買ってくれるので、小遣い銭にはなる。今年は雪が少ないので、作業がしやすいし、茅が傾かずに真っすぐ立っていてくれるので品質が良い」と目を細めた。

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