専門医「逐一手洗い、部屋でもマスクを」 コロナ感染で自宅待機が現実味 家庭生活での注意点は?

2020.04.16
ニュース丹波市地域

新型コロナウイルスの院内勉強会用の資料をまとめる見坂センター長=2020年4月13日午後9時37分、兵庫県丹波市氷上町石生で

阪神、神戸地域を中心に、新型コロナウイルスの感染者拡大が続いている。13日に兵庫県が改定した対処方針で、新たに無症状者・軽症者の自宅待機の検討が項目に入った。感染者と地域で共生することが現実味を帯びてきた。今日の流行をどう見ているかや、家庭生活での注意点を、感染症が専門の見坂恒明・県立丹波医療センター地域医療教育センター長(45)=神戸大学特命教授=に聞いた。

日本環境感染学会が示した家庭内での注意点

―兵庫県丹波市は1例で食い止めたが、都市部で感染者の増加が止まらない。

気を付けていても、人口密度が高い地域は、密接、密集、密閉の「三密」になるところがある、自覚症状のない感染者が知らないうちに広げている、ということだろう。人の往来を止めるために「緊急事態宣言」が出たが、効果は2週間ほどたたないと分からない。

―連日「何人が新たに感染」と発表があり、気が気でない。

感染者の全体人数よりも、重症者の数を気にしている。重症患者は、人工呼吸器をつけて集中治療室で治療を受けていたり、人工心肺装置「ECMO」をつけるなど、生命の危険にさらされている。この人たちを救命することが第一だ。

―13日24時時点で、県内の入院患者は262人。重症者は18人だ。他に「中等症以下」が244人いる。

「中等症以下」は、患者の重症度に濃淡がある。人工呼吸器でなく、一般的な病室にある配管から酸素を投与されている人は中等症。軽症者と、感染はしているが発症していない、平たく言うと元気な人を含む。検査陽性者を全員入院させているので止むを得ない。

―丹波医療センターは、阪神間から患者を受け入れていると聞く。

当院の患者は、今のところ、ほぼ軽症・無症状者だ。特にする治療がない人が大半。今はベッドにゆとりがあるが、より症状の重い人が入院してくると、ホテル隔離や自宅待機になるだろう。

―兵庫県は、重症者や中等症患者が入院できなくなる医療崩壊が生じないようベッド500床、無症状者・軽症者用に宿泊施設500室の用意を目指している。さらに、自宅待機を視野に入れ始めた。

病床も客室も用意できる数に限りがある。私は、自宅待機を否定しない。「自宅で待機を」と県から言われるのは、医療を必要としない人だ。ホテルで隔離される人も同じ。ホテルには、病室ならどこにでもある酸素投与の設備がない。基礎疾患がなく酸素投与の不要な、比較的若く元気な人を選んで、ホテルに隔離していく方針のようだ。

―ホテルと自宅と、隔離場所の違いはあるが、医療の必要度で見ると、同じということか。

そうだ。無症状や軽症の人は、阪神間のホテルより、自宅にいた方がいいのでは。ホテル滞在中に入院が必要になったとき、都市部は空きベッドが少ない。田舎の家は、都市部より相対的に広い。ただ、老老介護の高齢者世帯や単身高齢者で自宅待機に不安がある人は、無症状・軽症でも自宅よりホテルの方が良い。

―自宅隔離は、家族が感染しそうでこわい。

感染者がどこまで増えるかだが、入院させたり、隔離する場所がなくなれば、そうも言ってはいられなくなるので、「自宅隔離もある」と、心づもりはした方が良い。

―家族が注意すべき点を教えてほしい。

日本環境感染学会が示した感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項=表参照=に準じ説明する。1対1でも、同じ部屋にいない方がいい。同じ部屋にいるときは2メートル距離をとり、こまめに換気する。取っ手やドアノブなど共用部分は消毒する。タオルや食器、はしなどを共用しない。タオルは、トイレや洗面所、浴室などどこにでもあるので共用しないよう気をつける。トイレや風呂は水ぶきするか、家庭用の掃除用洗剤でもウイルス量を減らせる。洗濯や食器は、感染者と家族で別にする必要はない。一緒に洗って大丈夫。下痢をすることがあり、汚れた下着などは素手で触らない。ゴム手袋がない場合は、ビニール袋でも良いので手にはめて、洗剤を使って洗濯機で洗って完全に乾燥させて。逐一の手洗いも忘れずに。

―家族からでも、うつされるのは、やはりこわい気がする。

高齢者や基礎疾患がある人はリスクが高いので世話を避けた方がいい。高齢者の世話を娘さんや息子さんがしたり、幼児や児童の世話を親がしたことで感染しても、8割はかかったことすら気付くか気付かないかで治る。海外では、ものすごい数の死者が出ているが、日本は致死率が2%を切っている。うつされることに目が向きがちだが、世話をする人が、人にうつさないことも考えなければいけない。インフルエンザに意味がないと言われている医療用マスクがコロナに有効なことが分かった。布マスクも無意味ではない。家庭内、室内でもみんながマスクをつけてほしい。

―緊急事態宣言で何となく心苦しい人も多い。メッセージを。

地方に住む人は、これまで通りの手洗い、うがいの生活でいい。農作業をするのもいいし、人に接近せずグラウンドゴルフをするのもいい。学校や会社が休みになり、感染流行地域から田舎に戻って来た人は、「かかっているかもしれない」と思って、2週間程度は、出歩くのを控えてほしい。

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