「友だちの名消えた」「ヘトヘト」 コロナ受け保護者の意識調査 家庭の実態浮き彫り 医療従事者への罵声も

2020.05.21
ニュース丹波篠山市

アンケートにあった意見の一部=、兵庫県丹波篠山市内で

 兵庫県丹波篠山市味間新で子育て支援事業に取り組んでいる「おとわの森子育てママフィールド petit prix(プティ・プリ)」を運営するNPO法人「里地里山問題研究所」(鈴木克哉代表理事)が、市内の子育て世代に新型コロナウイルスの影響についてアンケートを実施した。回答者の8割超が子育て面で不安を感じており、7割超は家庭生活への不安を抱えていることが判明。切実な声もあることから、調査結果を18日、酒井隆明市長や前川修哉教育長に提出すると同時に、施策への反映を求める要望書を提出した。  調査は新型コロナによる休校措置が取られている中、子育て世代がどのような課題や思いを抱えているかを把握するために実施。今月1―12日までの間、インターネットを使ったウェブアンケートで実施し、市内在住で高校生以下の子どもを持つ保護者から182件の回答を得た。

◆子育て面・8割超不安「コミュニケーション不足」

 「休校・休園が続くことで子育て面で不安を感じるか」の問いには、「とても」の44・9%を含め、81%が「不安」と回答。具体的には、「友だちとのコミュニケーション不足」を筆頭に、「ストレスの増加」「学習の遅れ」「運動不足」などが上がった。  自由記述では、「2カ月間、友だちとのふれあいが全くない」「親の不安感・ストレスを感じ取って不安定になっている」「さまざまな経験をしてほしい年頃なのに、その機会がないことが悲しい」など、コミュニケーション不足の声が多く上がり、「会話の中から友だちの名前が消えた」という意見もあったという。  また、家庭学習に時間を取られ、「毎日、家事をしながら、もうヘトヘト。心の余裕がない」といった意見のほか、地域によっては児童クラブが預かる学年に制限が設けられていることに、「不公平だ」といった声もあった。

◆生活面・「収入半減、生活費増」「気分落ち込み」

 「生活面での不安」では、「家族への感染」が突出。「収入減や雇用への不安」「気分の落ち込み」が続き、「もし感染したら誰が子どもを見てくれるか分からない」といった情報不足の課題や、「月の収入が半分以下になったのに、休校で光熱水費、食費はいつも以上」という切実な声があった。  医療従事者でもある保護者からは、「近所の人から、『コロナ第1号になるのはお前のところやろ。迷惑をかけるな』などと罵声が浴びせられた」という声もあった。  また、77%もの人がストレスを感じており、「育児について相談したくても市の事業が中止になっている」「周囲の目を気にして、子どもを連れて買い物に行けない」などの声があり、「子どもを虐待してしまいそう」「メンタルケアをしてほしい」という声や、「学校や教育委員会に問い合わせたくても、『モンペ』(モンスターペアレント)と思われたくないからできない」という意見まであった。

◆市長「早急な対応指示」

結果を受け、同法人は、市長、教育長に対して要望書を提出。「情報発信の遅さや少なさは不安をかきたてる大きな要因になる」として、市の情報発信内容や伝達体制の見直しを求めた。

また、オンラインを使った学習や学童保育の体制が各校によって違うことについて公平性を求めたほか、▽子どもや保護者の心のケア▽食事など子どもたちの支援に取り組んでいる市民活動への支援▽子どもが安全に利用できる「野外遊び」環境の基準の策定―などを求めた。

その上で、幅広く市民の声を聞くことや、市としてのメッセージを発信し続けることを求めた。

プティ・プリでは、ストレス緩和にとインターネット会議を使った親子向けのオンラインイベントの充実や、ダンスエクササイズやマスク作りなどの情報発信に取り組んでおり、今後もネット会議を活用した座談会や悩み相談会なども検討していく。

受け取った酒井市長は、情報発信の整備や心のケア、十分な食事がとれていない子どもへの支援などについて、関係する部署に早急な対応を指示。「本来は市がやるべき調査で、本当にありがたい。5月で収束するとは思えず、まだまだ影響は続く。すぐに施策に反映したい」とし、前川教育長も、「ありがたい情報。市民の声に対応しきれていないことは反省している。意見を今後の取り組みに生かしていきたい」とした。

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