「約束破り」「何とも思わない…」 選挙公約修正どう思う? 5万円→商品券2万円交付に

2021.01.11
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議会運営委員会であいさつする林市長=2021年1月6日午前9時37分、兵庫県丹波市氷上町成松で

兵庫県丹波市の林時彦市長が、選挙公約に掲げた「新型コロナウイルス対策として現金5万円を市民全員に給付」を「商品券2万円」に修正したことについて、市民の受け止めを聞いた。「公約を守らなかった」「選挙(の当選)目当て」の批判と、「5万円だけが公約でない」「できる限りのことをしようとしている」の擁護が交錯する。「5万円給付を期待して投票していない」人からは、「何とも思わない」「2万円もらえたらありがたい」と、捉え方は様々だ。

63歳の会社員男性は、「選挙公約が守れなかったことが致命的。市民との約束を破ったことに不満を感じる。議員時代に議会で提案していた水道基本料金の減免を撤回してまでも商品券の財源に充てることに、政治家としての資質を問いたい。議会でどんな結果になるにしろ、公約を貫く姿を見せてほしかった。コロナ対策なら、商品券より、公共料金の支払いなどもできる自由度の高い現金で配布すべきだ」と批判する。

73歳サービス業の男性は、「当初から選挙目的なのが透けて見えていた」と厳しく指弾。「『5万円』に流され投票した人も多いのでは。コロナ対策名目なら、2万円を市民にばらまくのではなく、まとまった財源をもとに病院と連携して医療の充実に充てたほうがよい。商品券が大型店で使われると、地域商業の活性化には役に立たない」と話す。

57歳の会社役員は、「『財源はある』という話だった。現金ではなく商品券なのもおかしな話。同様の『5万円給付』で話題になった岡崎市の前例もある。リコール運動をされてもしようがないのでは」と厳しい見方。

擁護する声も。29歳のシングルマザーは、「5万円は実現しないだろうと思っていたから、商品券2万円になっても幻滅しない。公約と違うという意見もあるかもしれないけど、林市長が市民を思い、できる限りの支援をと前向きに考えてくれた結果と捉えるべきだと思う」と言う。

金額の多寡にかかわらず、給付は必要ないと、公約変更を肯定的に受け止める41歳の主婦は、「5万円を期待して投票していないので、2万円になったところで何も感じない。もともと手元にあるお金でもないし。5万円の話が先走っているけれど、ほかにやらなければならないことも多い。力を発揮してもらいたい」とした。

減額を「妥当」と判断する43歳の主婦は、「『まぁ、そんなもんやろな』という感じ。新庁舎より市民に公金を使ってほしいという思いや、新しい風への応援を込めて、選挙では林氏を支持したが、議会の反対もあるだろうし5万円は最初から無理だと思っていた。丹波市の活性化のためには現金より商品券の方がいい。基金はおいておく方がいいと思うし、2万円もらえたらありがたい」と述べた。

68歳の主婦は「選挙時点では、ある程度5万円給付を期待したが、市長になって内情がよく分かれば難しいのではないかという思いもあった。給付金はもらえたらうれしいが、後で税金や水道代が上がるようでは困る。今回の提案は、公約に挙げていたから額を減らしてでもなんとか実行したいという市長の気持ちの表れと受け止めている」と理解を示した。

戸惑う声も。44歳の会社員男性は、「商品券2万円は残念だが、選挙の時から『ほんまにできるんかいな』という思いもあり、『やっぱり無理か』と。自分は『5万円』で判断して投票していないので、だまされたというほどでもない。『公約違反』の声も聞くが、公約は『5万円』だけではないし、という気もしてよく分からない」と話す。

53歳のパート女性は、「商品券は苦肉の策と感じる。『5万円給付』と選挙で言えたのは、認識不足だったんだろう。議長を務めたとはいえ、行政の中のことは分からない。林さんの公約は、私たちが『こうやったらええねえ』というレベルで、様々な角度から検討されたものではないと感じた。私は、支持しなかった」と話した。

市議は「修正理由の説明を」「コロナ対策として審議」

一方、商品券の交付議案を審議する市議会議員はどう受け止めているのか。本会議での提案説明に先立ち、議案の説明を受けた市議会運営委員会の7人に考えを聞いた。

太田喜一郎議員
市長は、当選直後は、庁舎整備基金を崩して財源をつくり、5万円給付する、議会が賛成しなければ解散も辞さないぐらいの強い気持ちだったのに、中身が大きく変わった。議会が可決するか否決するかは別にして、一度は正面から5万円をぶつけ、市民に納得いく結果を見せるのが本来の市長の姿勢ではないか。これでは「2万円でこらえてくれ」と言っているような印象を持つ。

吉積毅議員
公約違反だというのは簡単だが、なぜそう考えるようになったのか、経緯をはっきり聞きたい。生活に困って給付を待ち焦がれている市民もいる。一律均等に商品券2万円でいいのか、水道料金の基本料の減免はなしにする提案が妥当なのか、難しい判断になる。

太田一誠議員
12日の市長の提案理由の説明を聞いた後で答える。

西本嘉宏議員
公約と内容が変わっている部分は釈明する必要がある。5万円給付の財源はあるという話だったはずだ。公約は実現することが前提ではあるが、状況によっては、公約通りでなく減額となっても仕方ない部分はあるかもしれない。市民への丁寧な説明が必要だ。財源確保のために、2カ月分の水道基本料免除を取りやめる必要があるのか問いたい。

近藤憲生議員
市民からは、公約違反だという声も聞く。ただ議会で審議するのは、商品券2万円を交付するという議案についてだ。公約違反だという内容は一般質問ですべきで、議案と切り離して考えないといけない。現金給付は反対だった。商品券は、意味のあることだとは感じる。

須原弥生議員
商品券2万円にした理由を問いたい。公約と違うという視点で見るか、コロナ対策として市民生活を支える有効な施策として見るのか、その見方が難しい。優先すべきことは何なのか。個人的にはコロナ対策が大事だとは思う。今、市民の受け止めを聞いている。

奥村正行議員
統合庁舎の整備は必要。庁舎整備基金を取り崩しての給付は反対だった。商品券2万円を交付する案は、市長と職員がよく議論して出した金額だろう。重要なのは、商品券の交付が本当に家計を助けコロナ対策として有効なのかどうか。冷静に審議する必要がある。

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