コウノトリおいで 「有機農業の里」へ 地域が人工巣塔を整備

2021.02.12
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設置を待つ人工巣塔の巣台と、吉見地区プロジェクト委員会の荒木会長=2021年2月8日午後1時45分、兵庫県丹波市市島町上田で

全国的な有機農業の先進地「有機の里いちじま」の取り組みを一層発展させる旗印にしようと、兵庫県丹波市市島町吉見地区自治振興会が、地区内の鴨神社(同市市島町梶原)の境内に、今年度中にコウノトリの人工巣塔1基を建設する。国の特別天然記念物コウノトリを呼び込もうというもので、新年度から地域の農業者に呼びかけて、コウノトリが1年を通して餌をついばめる環境づくりを意識した、化学肥料や農薬への依存度を下げた環境創造型農業のさらなる普及・推進に取り組んでいく。

1か月半滞在の実績「暮らせる環境あるのでは」

金属製の巣塔は、長さ12メートルのポールの先端に、営巣部になる直径2メートルほどの皿状の巣台を取り付ける。神社関係者と自治会の協力で、鴨神社の境内にある梶原自治会の所有地に設置する。国道175号から見える場所。

2017年秋に飛来したコウノトリが約1カ月半、梶原地内に滞在したのをきっかけに、「暮らせる環境があるのでは。環境創造型農業に取り組む、有機の里市島にぴったり」とコウノトリを「誘致」する話が持ち上がった。今年度、自治振興会の中に「ウィー・ラブ・コウチャン・プロジェクト委員会」(荒木武夫会長、20人)をつくり準備を進めてきた。

先に巣塔を作るか、生息環境を整えてから巣塔を整備するかで議論があったが、巣塔が見えることで、目指す姿を共有しやすいのではないかと、ハード面を先行させることにした。

吉見地区の農会長らと協議の場「環境創造型農業推進会議」をこれから立ち上げ、餌を供給するための田んぼのあり方などを話し合っていく。

「繁殖は夢、一羽でも来てくれたら」

丹波市市島町に飛来したコウノトリ。うち1羽は4年連続やってきた(2019年撮影)

荒木武夫会長(67)は、「コウノトリを呼ぶのは手段。これまで取り組んできた、環境負荷の少ない農業をより発展させ、自然環境を整えるのが目的」と言い、同プロジェクト委員で、但馬県民局のコウノトリファンクラブ会員としてコウノトリを追いかけている井上勉さん(73)=同町上田=は、「一朝一夕にはいかないだろう。いつかつがいになり、ひなが生まれ、巣立つのを見たいがそれは夢。1羽でも来てくれたら、地域の人がずいぶんなごむだろう」と胸を躍らせている。

1975年に農業者が「市島有機研究会」を設立するなど、「市島」は、全国的にも名の通った有機農業が盛んな地域。市内の有機JAS認証を受けた農地54ヘクタールのうち28・5ヘクタールを同地域の生産者が耕作している。

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