コロナが後押し? 昨年の移住相談2倍に 移住者も初の100人超え 「第二の人生」より子育て世代中心

2021.02.20
地域

自然豊かな景観が広がる丹波篠山市=兵庫県丹波篠山市内で

兵庫県丹波篠山市が開設している「丹波篠山暮らし案内所」の2020年の移住相談実績が500件を超え、前年比2・3倍となった。案内所を介して実際に移住した人も、開設以来、初めて100人を突破した。もともと移住を計画していた人が、新型コロナ禍によって背中を押されたことが背景にあるとみられる。新年度も「農村」の魅力発信に力を注ぐ市は、「ポストコロナに対応した丹波篠山での暮らしを多くの人に知ってもらい、住みたいまちとしての評価を高めたい」としている。

案内所は市が開設し、電話、メール、面談による相談を実施している。昨年は全ての月で前年の相談実績を上回った。

前年比で最も多かったのは8月の72件。前年は15件で、4・8倍になった。ばらつきはあるもののほかの月でも1・1―3・82倍となっている。

昨年の移住実績は38世帯101人。2009年の開設以来、最も多かったのは19年度の70人で、一気に30人以上増えた。年度途中の速報値のため、20年度全体ではさらに増える見通し。

案内所の聞き取りでは、「農業がしたい」「広い家に引っ越したい」などの理由が多いが、コロナ禍で広がりつつあるリモートワークの普及によって、「田舎のほうが住みやすく、部屋数が多いので自分の個室が持てる」といった声や、「都会で密になる生活に懸念がある」など、コロナを理由にする人もいるという。そのため、これまでの移住では定年後の「第二の人生」として地方暮らしを希望する人が多かったが、昨年は30代の子育て世代が多かった。地域別では阪神間が最も多いという。

案内所は、「コロナのことを話題にする人はいるが、実際に移住した人の大半は、もともと移住を計画されていた人。コロナが移住の予定を早めた可能性はある」と分析。「ただコロナの影響による収入減でローンが組めなくなる人が出てくるかもしれず、今後の動向を注視している」と話す。

一方で、「地方に注目が集まっているのは確かなので、今年も移住のPRを行い、リモートでの移住相談も増やす予定。また、受け入れる側の地域でも空き家の掘り起こしなどに取り組んでいきたい」としている。

市は移住前の「お試し滞在支援事業」を実施中。市内の「福住わだ家」と「おちかた温泉の郷農園」に滞在して、住環境の確認や職探しをする人に滞在費の一部(上限3万円)と交通費(同3000円)を助成している。

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