県指定文化財に 遺跡から出土の木製農具「犂」 国内最古級、当時の形とどめる

2022.02.22
地域

梶原遺跡から出土し、県指定文化財となった2組の「犂」=2022年2月16日午前10時52分、兵庫県丹波市市島町上田で

兵庫県教育委員会は、丹波市市島町梶原の梶原遺跡から出土した7世紀中期―後期(飛鳥時代)の木製農具「犂(からすき)」2組を県指定文化財に指定した。犂は、牛馬に牽引させて田畑を耕す農具。1992―93年の発掘調査で見つかり、97年に旧市島町の文化財指定を受け、2004年の丹波市誕生により市指定文化財となっていた。全国でも7―8世紀の遺構から出土した犂は11組しかなく、同遺跡の犂はその中でも最古級で、2組ともほぼ完全な形をとどめる唯一の資料という。県教委は、「日本列島における導入期の犂の全形を知ることができるものとして貴重であり、列島の農業史を考える重要な資料として評価できる」と話している。

梶原遺跡から見つかったのは、中国から伝えられた、犂ヘラと犂柄の間を長い犂床でつなぐ「長床犂(ちょうしょうすき)」。犂先、犂ヘラ、犂床を1つの木で作り、犂柱、犂柄、犂轅(りえん)と組み合わせて使う。その状態で全長約1・5メートル、高さ約90センチ。犂床が長いことで安定的な操作が可能になるという。犂ヘラの角度から、耕土を進行方向の左側に反転させていたことが分かるという。

犂の各部名称(提供)

犂は遣唐使を通して政府によって導入され、「様(ためし)」と呼ばれる実物模型を製作し、各地で同様のものが作られ使用されていたという。同遺跡の犂の材には、ヤブツバキやカシ、カエデなどが用いられている。

同市における考古資料(遺跡から出てきた遺物)としての県指定文化財は、88年に春日町野々間遺跡(同町野上野)から出土した銅鐸(2口)以降、34年ぶり。今回の指定により、市に所在する県文化財は44点となった。

丹波市文化財課は、「当時とほとんど形が変わらない犂を、トラクターが普及するつい最近まで現役の農具として使っていたことに驚かれるのでは」と言い、「国内最古級で状態もすこぶる良い犂が見られるのは全国でも丹波市だけ。当時の市島は大陸からもたらされたハイテク道具が導入されるほどの最先端なまちだったという地域の歴史にも関心を持ってもらえたら」と話している。

市島民俗資料館(同市市島町上田)で展示している。

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