兵庫県丹波市にある国指定史跡・黒井城跡の登山道沿いや、山頂の遺構を守るために同市が設置している木の杭が、頻繁に抜かれる事案が発生している。杭と杭の間に張られたロープが切断されていたこともあり、事案が発生するたびに同市文化財課の職員や、地元のグループが修復作業に追われ、困惑している。
同城主は「丹波の赤鬼」の異名がある赤井悪右衛門直正。天正年間、織田信長の命を受けた明智光秀が、丹波国平定戦「丹波攻め」を繰り広げた。同3年、丹波国に覇を唱えていた直正との戦いでは、直正が光秀軍を挟み撃ちにする戦法「赤井の呼び込み戦法」を展開し、光秀は敗走した。光秀は同6年、再び黒井城を攻め、直正を病で失っていた赤井方は敗れ、黒井城は落城したという歴史がある。
2年ほど前、市が杭とロープを設置。登山道沿いにある危険個所に立ち入らないように注意を促し、山頂を中心に遺構を保護する目的で、登山客が足を踏み入れないように進入を制限している場所がある。
設置当初から発生。1度に抜かれる本数の多さなどから獣の仕業とは考えにくく、刃物とみられる鋭利なものでロープが切断されていたこともあったという。市文化財課によると、杭を直しても数日後には抜かれていることが多い。一部、鉄製のピンポールを使用していた個所もあるが、抜かれて所在が分からなくなっている。
このほかにも、赤門がある「石踏(せきとう)の段」でたき火のあとが確認されたり、山頂でバーベキューをした痕跡が見つかったりしたこともあったという。
地元の黒井城跡地域活性化委員会は毎月1回、登山道の点検のため登城しているが、毎回、ハンマーを持って杭の修繕作業をしている。登山愛好家が修復を買って出てくれたこともあったという。
同委員会と市文化財課は、「杭を抜く理由は分からない」としつつも、「杭が設置されるまで通行できていた個所もあり、近道をしたいから抜いているのかもしれないし、山頂では杭やロープが撮影の邪魔になるのかもしれないが、大切な遺構を守りたい。マナーを守ってほしい」と訴えている。