これわかる? 小学生が「和算」挑戦 138年前の難問 神社に掲げられた「算額」

2023.03.25
地域

高専生にヒントをもらいながら難問に挑戦する6年生=2023年3月8日午後2時10分、兵庫県丹波市青垣町佐治で

これわかる?―。兵庫県丹波市の青垣小学校6年生が、地元の熊野神社に明治18年3月に奉納された「算額」に記された、日本独自に発達した数学「和算」の問題に挑戦した。円の直径を求めるもので、中学1年、3年で学ぶ単元を含んだ難問。児童は定規とコンパスを使い、138年前の問題と真剣に向き合った。

 

問題は次の通り。

(問)「天」の円の直径はいくらか。

算額に示された問題

〈現代語訳〉図のように、直線の上に直径2センチの「地」という円がある。「地」という円に左右から接し直線にも接している直径3センチの「人」という円がある。「人」の円2つと「地円」に上側から接する、「天」という円の直径を求めよ。 直線上の「人」円は真ん中の「地」円と直線の両方に接し、左右両側に1つずつある。「人」円は「天」円と直線に挟まれている。「地」円の直径は2センチ、「人」円は直径3センチ。
※原文は「寸」だがセンチに改めた

熊野神社の宝物の算額(氷上郡教育委員会発行「氷上郡の文化財」より)

算額を研究する国立明石高専(同県明石市)で数学を教える松宮篤教授が、生徒を連れて来校。松宮教授は、和算が江戸時代を中心に栄えたことや、和算を極めた和算家が自身の力量がさらに高まることを願い、また問題が解けた感謝の気持ちを込めて、問題をつくり、解答と共に大きな絵馬に描き、神社に奉納する風習を「算額」と呼ぶことを説明した。

同神社の算額は、和算家で、測量で生計を立てていた佐藤善一郎貞次(1841―1902)が民衆を指南し、作り上げたもの。佐藤は円周率の計算で知られる、幕府にも仕えた江戸前期の和算の大家、関孝和の流れをくむ「関流」の11代を名乗っていた。丹波市近隣の京都府福知山市夜久野町や、兵庫県養父市、豊岡市出石町の寺、神社にも、佐藤から指南を受けた人たちが算額を奉納している。

丹波市指定文化財の熊野神社の算額は、6問描かれている。松宮教授は、「最も解きやすそうな問題」を出題したが、児童の手には負えなかった。

児童は「普段は勉強しないことを高専の皆さんに教えてもらってうれしかった。めっちゃ難しく、小学校6年間の勉強では解けなかったけれど、解ける大人になりたい」と話した。

回答の一例

出題者は全て「天田郡日置」(現・福知山市夜久野町)と記載があり、昭和初期まで京都府から山を越え、熊野神社に多くの参詣者があったことを物語っている。同神社の算額は、研究者間では存在が知られているが、地元ではほとんど知られていない。松宮教授は、ふるさと学習に役立ててもらいたいと考えている。

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