22分で行方不明者発見 ”ビビり”の警察犬に表彰状 ビーフジャーキーも贈る

2023.06.14
地域

行方不明者を発見し、署長から表彰状を贈られたヴィクトール号。取材中もオドオド=2023年6月14日午前9時58分、兵庫県丹波篠山市郡家で

兵庫県篠山警察署は14日、行方不明者の発見に功績があったとして、警察犬の「ヴィクトール・フォン・マイン・リーベ号」(シェパード、雄、3歳。愛称・アル)に表彰状を贈った。県警本部鑑識課警察犬係に所属する犬たちの中でも「トップ級の“ビビり”」だが、ゆえに人の動きや気配に敏感。今回も特徴を強みに変え、捜索に投入後わずか22分で不明者を発見するという功績を残した。

事案が起きたのは今月3日。午後1時半ごろ、市内の女性が買い物に出かけ、午後5時半に帰宅すると、70代の夫が姿を消しており、110番通報した。

男性は持病があり、薬を飲まないといけないため、早期に見つけないと命にかかわる。同日と翌日、警察だけでなく自治会や地元消防団、他の警察犬も投入され、捜索に当たったが発見できなかった。

3日目となった5日にやってきたのがアル。午前9時40分、防犯カメラで最後に男性の姿を確認した場所からスタートし、もう1頭の警察犬と手分けして捜索を始めた。

男性の布団やまくらのにおいを手掛かりに、担当の廣瀨雅巡査部長(40)とともに付近を捜索していると、アルが地面ではなく、空気中に漂うにおいに反応する素振りを見せた。

動きを頼りに廣瀨巡査部長が誘導して進むと、河川敷の草木が生い茂る場所で布のようなものを発見。消防団員が斜面を降りて草木をかき分け、午前10時2分、倒れている男性を保護した。男性は歩いているうちに斜面を「滑り落ちた」と証言。顔にすり傷を負い、衰弱気味ではあったものの、命に別状はなかったという。

男性が倒れていた場所は自宅から直線距離で約800メートル。1メートルを超える草や木々が生い茂っているため人の目では見つけづらく、警察犬の嗅覚が生かされた。ヘリも投入し、延べ約300人が捜索した事案は、アルの活躍で無事に解決した。

警察犬になって2年半。これまでにも行方不明者の発見や強盗未遂事件の検挙で功績があり、表彰状を贈られている“名警察犬”だ。

「どの犬も優秀です」と胸を張る廣瀨巡査部長によると、アルは空気中に浮遊するにおいをとらえることが得意。「本部直轄犬の13頭の中でもトップ3に入る“ビビり”ですが、アルが『ビクッ』としたときは何かがあるということです」とほほ笑む。

3枚目となった表彰状に、廣瀨巡査部長は、「訓練の成果を発揮し、命を救うことができてよかった。これからもがんばってほしい」と”相棒”を称えた。

同署の山本隆美署長は、「期待はしていたが、改めて警察犬の重要性と優秀さを実感した。すごいです」とアルの頭をなでていた。

同署は表彰状とともにビーフジャーキーを贈った。

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