柿もいで獣害対策 霊長類学会大会で最優秀賞 高校生がポスターで実践報告

2023.08.09
地域注目自然

「日本霊長類学会大会」で「丹波篠山市の獣がい対策―放任柿の早期収穫とその利用」をテーマに、ポスターを使った実践活動報告を行い、最優秀賞を受賞した篠山東雲高校自然科学部の4人=兵庫県丹波篠山市福住で

兵庫県立篠山東雲高校の自然科学部の4人がこのほど、兵庫県民会館(神戸市)で開かれた「第39回日本霊長類学会大会」で「丹波篠山市の獣がい対策―放任柿の早期収穫とその利用」をテーマに、ポスターを使った実践活動報告を行い、最優秀賞を受賞した。4人は、同市の農業が深刻な獣害被害に見舞われていることを報告。獣害対策に取り組んできた事例の一つに、放任された柿の収穫をあげ、収穫した柿を使って加工品を開発したり、洋菓子店とタイアップし商品化して販売したり、市のふるさと納税の返礼品に加工品の一つが採用されたりしたことを披露した。

受賞した4人は、3年生の長澤颯希さん、西田光澄さん、2年生の坂本光希さん、永井涼太さん。

ポスターはA0判の紙に同市の獣害の現状と原因、活動内容、今後の展望などを記載し、獣害被害の状況を示す表や、収穫した柿を使って開発した加工品などの写真も掲載。丹波篠山は美しい里山の風景が残る地域で農業が基幹産業になっているが、野生動物も多く生息し、農作物被害は深刻だと訴えた。

中でもサルの被害に着目。同市のデータを引用して2018年度は被害面積が約1ヘクタール、被害額は約200万円に上ったことを報告した。サルが里に現れる原因の一つに、民家の庭先に収穫されずに放置された柿にあるとし、柿を目当てに山から下りてきたサルが、農家が栽培している農作物にも手を出し、獣害被害になっているので、柿を放任せず収穫することが有効とした。

収穫した柿を無駄にせず、獣害対策を広くPRするために加工品を開発し、同市のふるさと納税の返礼品にする取り組みも発表した。

21年度は、柿のジャムを使ったロールケーキ「かき茶ロール」を考案。市商工会青年部主催の「高校生グルメチャレンジ」に応募し、21組の中から1位に輝いた。その後、市内の洋菓子店とタイアップして商品化し、期間限定で販売した。

22年度には、捨てていた柿の皮を有効活用しようと、乾燥させてパウダー状に加工。そのパウダーを使用してパンやクッキーを製造した。考案した柿のカンパーニュ「かきぱーにゅ」を引っ提げ、「第17回全国高校生パンコンテスト」に応募し、331作品の中から入賞に選ばれた。

獣害対策応援商品の一つで、11月から丹波篠山市ふるさと納税の返礼品として取り扱いが決まった柿、黒豆、栗を使ったジャム

さらには、柿のジャムと、獣害対策を行ったことで立派に育った丹波黒大豆、丹波栗のジャムの3種の詰め合わせを市のふるさと納税返礼品に申請。今年11月から取り扱われることが決まった。

締めくくりに「地域の農業を守るため、多くの人や団体が協力して活動されている。私たちも農業高校の生徒として柿ジャムなどの獣害対策応援商品を生み出してきた。これからも丹波篠山の獣害対策を応援する人たちと農家をつなぐ歯車になりたい」と今後の展望を語った。

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