銅版画家 加藤昌男さん(丹波篠山市)

2023.08.06
たんばのひと

加藤昌男さん

音楽祭のポスターを制作

毎年秋、丹波地域で開催される音楽祭「シューベルティアーデたんば」のポスター類の原画を7年前から手がけている。同音楽祭は来年で30回目を数える。「30回とは、すごい。丹波の文化の土壌が豊かであることの証し。そんなプロジェクトに関わらせてもらえるのは、うれしいこと」と話す。

大学時代から銅版画を始めた。退職を機に吹田市から移り住み、自宅に工房を構えて銅版画の制作に専心。作品はバリエーションに富むが、なかでも宮沢賢治の世界を描いた作品で知られる。霊長類学者の河合雅雄さんの著書「宮沢賢治の心を読む」の表紙や挿絵を描き、2015年には岩手県花巻市の宮沢賢治記念館で賢治の童話をテーマにした銅版画展を開催。花巻市から宮沢賢治賞奨励賞も受けている。「教室で製本を学んでいた妻が課題で絵本を作ることになり、絵を依頼された。その頃、鳥の作品をよく作っていたので、鳥の出てくる物語として賢治の『よだかの星』を手に取ったのがきっかけとなり、賢治の世界にひかれたんです」と明かす。

同音楽祭のポスターは、銅版画だけでなく色鉛筆、水彩などさまざまな技法で制作する。今年のポスターは、木を焦がして作るウッドバーニングの技法を採った。「シューベルトがつなぐウィーンと丹波」というテーマから発想を広げ、画面の左右にウィーンの森と丹波の森を配置した。シューベルトの演奏に、それぞれの森にいるウサギやシカ、クマ、イノシシなどの動物が耳を傾けているという構図。

「丹波の森構想は、賢治の夢見た理想郷をいうイーハトーブと通じるものがある。丹波がイーハトーブになればいいですね」。83歳。

関連記事