シダ採集し標本に 70年前の先輩の調査地訪ね 高校理科部員と研究者ら

2023.09.17
ニュース丹波市地域地域注目

シダ植物の説明を県立人と自然の博物館の鈴木武研究員から聞く理科部員(右端)たち=兵庫県丹波市柏原町東奥で

兵庫県丹波市の柏原高校理科部が、水分れフィールドミュージアム(同市氷上町)の企画展「標本大集合いきものの“ナゼ”にせまる」で展示するシダ植物の標本作りに取り組んでいる。現役の生徒が作った標本と、植物学者で人と兵庫県立自然の博物館名誉館長の岩槻邦男さん(89)ら部の大先輩が70年以上前に作った植物標本のデジタル版が並べて展示される。

シダ植物に詳しい同博物館の鈴木武研究員の指導で8月28日、学校近くの住宅地や山で採集した。岩槻さんが理科部の前身、生物班の現役部員の頃に採取した場所で、標本と同じシダが今も残っているか、また、その頃になかったシダが流入しているかなどを確かめた。

採集したシダ植物の水分を抜くため新聞紙に挟む生徒たち

鈴木さんは、住宅地の側溝に生えていた「イヌカタヒバ」を採集。「国内外来種で、岩槻さんの学生時代にはなかったかもしれない。また、今あっても20年後にあるかは分からない。標本は、少なくともこの時点でここにあったことの証明になる」と説明。標本にできない場合は、写真を撮影するなど記録を残すことの重要性を説いた。

また、▽胞子が付いているものと付いていないものをセットにする▽全体の長さが分かるように地上部全体を採集する―などとこつを説明。奥村川沿いの山に入り、オオバノイノモトソウ、ヤブソテツ、オニカナワラビ、タチシノブなどを次々と採取。生徒たちは専門家の同定に感心していた。

学校に戻り、標本作りを実習。台紙に貼る前作業の脱水を体験。シダを新聞紙に挟み、その新聞紙の上下に別の新聞紙を置いて吸水させ、十分に重石をして、採集日から数日は吸水用紙を小まめに交換することを学んだ。

石田大翔部長(2年)は、「スマホやゲームでもいろんな人とつながれるけれど、現場で生の経験を積むことが大事だと分かった。鈴木さんと同じ物を見ても、知識を持っているのといないのとでは見え方、感じ方が違うんだとも思った」と言い、2年生部員も、「シダ植物は全部似ていて、同じように見ていたけれど、1カ所に数種類あり、説明してもらって違いに気づけた」と話していた。

今春、岩槻さんが同校標本室を訪れ、1950年代に自身が作った標本や、明治2年(1869)の古い物など71点を選び、同博物館でデジタルデータ化した。

企画展は、丹波市や氷上回廊に関する標本を集め、自然、歴史、文化を解説し、地域資源を次世代に引き継ぐことの大切さを伝える展示。11月18日から。

関連記事