コロナ禍で余った日本酒→伊のコンテストでWゴールド 予想外の展開「災い転じて福となす」

2023.10.01
地域注目

「ミラノ酒チャレンジ」でダブルゴールドを受賞した3年貯蔵酒を手にする荻野さん。後ろのタンク3本に売り先を失った酒が入っている。中央のタンクから注いだ古酒を出品した=兵庫県丹波市市島町上牧で

イタリア・ミラノで開催されたイタリア人に日本酒の素晴らしさを伝えるコンテスト「ミラノ酒チャレンジ2023」で、兵庫県丹波市市島町の「鴨庄酒造」の古酒「花鳥末廣夙成3年貯蔵古酒」が、最高賞のプラチナ(3点)に次ぐ、ダブルゴールド(2点)に選ばれた。元は、他社に販売(桶売り)するために仕込んだ安価なパック酒用原料酒。新型コロナによる需要の低迷で売り先を失い、蔵のタンクで眠っていた酒を出品したところ、思いがけない好結果で、蔵元の荻野弘之さん(56)は、「狙って仕込んだわけでもなく、たまたま。マニア向けの酒ですが、蔵の知名度向上につながれば」と、「災い転じて福となす」予想外の展開に喜んでいる。

受賞酒は、琥珀色。アルコール度数は21・9度で、酒税法上、「清酒」に区分できる上限の22度未満に肉薄する。

審査員の評価は100点満点中85点。アロマ総評が同86点。テイスティング総評が同74点。米ぬか、グレープフルーツの皮、熟したバナナのような香りと、イエローメロン、スターフルーツ、ピンクグレープフルーツのような味を特に感じ、「甘く発酵したニュアンスがあり、攻撃的ではあるがエレガント。優れた酸味と持続性を持つ。鼻と口に硫黄のニュアンスがあり、長く鋭い持続性がある」が審査講評。

酒ソムリエ資格を持つ、イタリア人ワインソムリエ、バーテンダーなど酒と食の専門家が現地で審査した。

同社は、コロナで桶売りの販売先を失い、昨年から伝統的な仕込みに変え、自社銘柄の純米酒のみを醸す蔵として再出発を切った。受賞酒は、桶売り時代の2019年醸造。5代目の荻野さんが、家業を継ごうと帰郷した年に仕込んだ。

低コスト、省力化で大量生産ができる、米を蒸さずに酵素を使って液状にして仕込む「液化仕込み」。醸造用アルコールを加え、21・9度にしたのは、タンクローリーで引き取り、加水して14度程度に調整して販売する桶売り業者のため。

「ミラノ酒チャレンジ」でダブルゴールドを受賞した古酒

原料米も「酒米か飯米か分からない安い米」(荻野さん)と言い、液化仕込みのため、「2週間半でできたお酒」と言う。「特に工夫した点はなく、材料や製法にこだわったわけでもなく、良い賞を頂いて申し訳ないくらい」と恐縮する。

引き取り先を失った酒をどうすることもできず、2万リットル、1升瓶換算で1万1000本、111石分の在庫は、冬は氷点下、夏は30度近くまで室温が上がる蔵で放置するしかなかった。

再出発直後の今年、賞狙いではなく、審査員のコメントを参考にしようと、6つの品評会に出品。応募先を探す中で、同コンテストが目に留まった。「海外はアルコール度数が高い酒が好まれると思い、21・9度と一番パンチのある酒を出品した。狙いがはまった」とほほ笑む。

現在の同社の年間石高は20石、一升瓶換算で2000本と、日本最小クラスの清酒蔵。受賞酒の在庫は膨大だ。「個人的にはあまり飲まないマニアックな酒。受賞したからといって、一度に全量売れるとは思っていない。5年古酒、10年古酒と寝かせるのも面白いかもしれない」と売り方に頭を悩ます。市販予定だが、販売日、価格とも未定。

イタリア最大の日本酒コンテスト。イギリスに本部がある酒ソムリエ協会の主催。純米大吟醸、大吟醸酒部門など4部門あり、スペシャル部門の中の古酒カテゴリで受賞した。古酒で味覚の賞は13点。もう1点の「ダブルゴールド」は兵庫県を代表する有名蔵元の出品酒と、各地の蔵元が選りすぐりを出品した。

関連記事