高齢化率43・4%、22戸76人の小集落、兵庫県丹波市氷上町中野自治会(岸田隆博会長)が、自治会協議費の徴収ゼロを目指し、丹波栗栽培に励んでいる。村人が汗を流して得た収益の一部を村会計に入れ、全体の負担を減らす。退職し、年金生活になる高齢者はさらに増えるため、協議費の支払いが苦しくなり、村の維持が難しくなる前に助け合う形をつくる。今は生栗販売だが、来年から加工品も販売し、再来年の2025年度に徴収ゼロを達成する3年計画。目指すは「持続可能な村」だ。
戸数が少なくても、集落の維持に一定費用がかかる。10年ほど前は、自治会全体で年間120万円ほど集めていた(1戸当たり平均5万5000円弱。実際は均等割、土地割で世帯ごとに額は異なる)。「こんなに協議費が高くては将来、暮らしていけない」と悔やむ声を受け、歴代自治会長が歳入歳出削減に取り組んできた。
昨年度、自治会長に就任した岸田さんは、コロナ禍の事業休止や、慣例で続いてきた多額の繰越金を見直し、減額。後期の協議費「ゼロ」を実現し、非常に喜ばれ、将来にわたり「笑顔で暮らせる持続可能な村」を掲げ、「3年後に協議費ゼロ」計画を打ち出し、住民の理解を取り付けた。
歳入の柱に目を付けたのが、11年前から自治会を挙げて栽培してきた丹波栗。栗会計から一部を自治会に入れる。自治会田に、将来の助けにと植えた「銀寄」「筑波」117本が成木に。昨年、500㌔が取れ、売り上げが50万円に達し、収益化のめどがついた。
村に入れる額と、農業資材費を除いた額を、栗拾い、剪定の出務者で分配する。資材費以外の全額を分配していた昨年度より分配金が減っても、払う協議費が減る。出務できない人も助かる。
年5回の園の草刈りは自治会の日役にして賃金の支払いをなくし、経費を約20万円節約。繰越金減額を続け、コロナ禍で休止した行事を再開しつつ、いくつか廃止し、前年度より2万円少ない48万円が今年度の協議費総額。今秋の栗収益から来年度、自治会に20万円還元を目指す。実現すれば来年度は協議費総額が28万円まで下がる。
女性を中心に、加工品を開発する「しゃべくり開発チーム」(11人)が、第一弾商品の渋皮煮を開発中。渋皮煮を販売する来年度は、栗収益をさらに増やし、村への還元を増額し、25年度に年間協議費徴収ゼロを達成する青写真を描く。開発チームは、渋皮煮作りが得意な岸田富美江さん(85)の「やろう」の声で始まった。女性が意欲的だ。
一人暮らしの女性(77)は「年金暮らしに高い協議費はこたえる。栗が助けになればいい。みんなが集まっておしゃべりしながら栗拾いや選果ができるのも、とても良い」と喜んでいた。
岸田会長(65)は、「栗を拾ったら自分に還って来て、うれしい、助かる、を実感してもらえればうまく回る。助け合わないと、自治会が成り立たない。住みやすく、やりがい、生きがいがあり、楽しい中野になれば」と思いを語った。