クマが餌求め里に接近 痕跡・目撃情報相次ぐ 専門家「出合ったら絶対騒がない」

2023.11.28
地域注目

丹波市春日町七日市に現れたクマの駆除を報じる2002年7月4日付の丹波新聞

クマが柿などの餌を求め里に接近している。18日に兵庫県丹波市市島町上竹田(今中)で目撃情報、同町上鴨阪で痕跡情報、19日に同町上竹田(段宿)で目撃情報、20日に同市青垣町中佐治(杉谷)で痕跡情報が相次いだ。東北で人がツキノワグマに襲われ、丹波市民も「クマと出合ったら」と怖がっている。クマの生態に詳しい県森林動物研究センター(青垣町沢野)の横山真弓研究部長(兵庫県立大教授)は、「もし出合ったら、絶対騒いではいけない。野生動物は興奮させると何をするか分からず、手がつけられない」と言い、あわてずその場から離れるよう助言する。あわせて「出合ったときの心配をする前に、出合わないためにどうするのかを考えてほしい」と釘をさす。

県ツキノワグマ管理計画(今年4月策定)によると、1996年度以降、記録されている人身事故は県内で27件。死亡事故は発生していない。うち3件が丹波市=表。22件が但馬地域。大量出没の2010年度の4件が最多。ゼロの年もある。令和元―3年度に各2件発生している。

丹波市の3件のうち2件は山での出来事。里で起こったのは1件で、この時、目撃されたクマ2頭のうち1頭は射殺された。事故は山中、または山際で多く起こっている。クマは人を避けて暮らしているが、夕方から早朝の時間帯、食べ物に執着しているとき、人と鉢合わせして驚いたときに人身事故が起こる。

丹波市のクマによる人身事故(1996年度以降)

もし出合ったときは、「クマが気付いていない場合は、気付かれないよう静かにその場を立ち去る。クマがこちらを見ている場合は大きく手を振りながら、穏やかに『おーい』と声をかけながら後退する。視力が悪く、こちらに近寄って確かめようとするので、体が大きな人間であることをアピールする必要がある。ただし、10メートル以上距離がある場合の対策。10メートル以内に近寄ると、クマスプレーを持っていない限り、できることはない」とする。

通常、10メートル以内の至近距離に近寄ることはない。至近距離で出合うと、人は怖さでほとんど転倒してしまうという。鈴やラジオなど音がする物を持ち、至近距離で出合わないようにすることが重要だ。

「里が餌場になると動かない。餌に執着し、近づく相手を攻撃するようになる。そうさせないようにするしかない。出合ったらどうしようと考えるより、出合わないためにどうしようとまず考えてほしい。車にぶつかったらどうしようと考える前に、ぶつからないように注意しようと考えるのと同じこと」と被害の未然防止対策を促す。

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クマは本来、肉食獣。人を襲って食べるクマは兵庫にいないのか。

「ツキノワグマは、『機会選択的捕食者』と言い、肉があれば喜ぶが、狩りをしてまでは食べないと言われてきた。クマにもいろんな個性やタイプがあり、あまりに個体数が増え、誘引物を取り除かずに放置する期間が長くなると、狩りをするクマも出てしまうが、兵庫は、東北の事態にならないように地域と共に被害防除を行い、政策的に数が増え過ぎないよう対応していきたい」と、改めて個体数管理の重要性を説き、市民にクマを引き寄せないように「不要柿」をもぐよう注意喚起する。

増え過ぎたシカの個体数管理に長い時間と労力がかかっているように、一度増えてしまった野生動物を管理するのは難しく、増やさないための「予防」が肝要だ。また、人里の食べ物の味を覚えたクマは山に帰らず、駆除する以外の対処法がない。共存には、人がクマを里に引きつけないようにすることが大切だ。

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