日本一の大碁盤 囲碁で領地争い解決の故事

2023.11.26
たんばの世間遺産地域歴史

日本一の大碁盤」との石碑もある大碁盤。木の碁石も置いてある=兵庫県丹波市柏原町大新屋で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市柏原町大新屋の「日本一の大碁盤」です。

かつて隣村との領地争いを囲碁の勝負での解決を試み、これに勝利して領民に平穏な生活をもたらしたとの故事がある谷垣石見守を祭る、同地区の石見神社の祠の前にある。そばにある石碑によると、大きさは縦2メートル5センチ、横1メートル91センチある。重さは約4トンあり、通常の碁盤の23倍という。

地元の新井村誌などによると、地域の背後にそびえる「新山」(石戸山)は、1509年(永正6)に米百俵、銭百貫で同村の挙田、大新屋、鴨野、北山、田路に永代売渡されていた。しかし、その後も隣村とたびたび山境を巡って対立していたという。

同村誌には、この問題の解決を巡る「伝説」が紹介されている。石見守は隣村の領主との囲碁勝負で解決を試みたとし、「未曽有の対局には深遠な智謀を発揮し活殺自在遂に石見守の勝利」となったとある。

谷垣石見守を祭る石見神社

この一連の話が、地元・柏原町に伝わる昔話などをまとめた本「柏原の民話とうた」(グループふるさと発行)で紹介されている。囲碁勝負に同行した囲碁名人の若者が、傘に小さな穴を開け、穴から射す光を碁盤に当てて、次の手を石見守に教えたと、ほのぼのとした内容で伝えている。

大碁盤は1992年(平成4)、石見神社を管理する新山管理組合が奉納した。地元・大新屋の歴史に詳しい、丹波古文書倶楽部代表の岸孝明さん(75)は、「村の財産を守り、ニュースポーツの囲碁ボールのきっかけにもなった人物。地元にとって恩人ですね」と話している。

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