メディア業界の専門紙「文化通信」を発行する文化通信社(東京都千代田区)が地域紙の優秀な記事を表彰する「第3回ふるさと新聞アワード」で、丹波新聞の「柏原藩陣屋の秘密穴 藩主の抜け道伝説」(2023年5月18、21、25日号掲載、田畑知也記者)が「もの」部門で最優秀賞を、「Googleアワード」に「『丹波』秋の味覚、人気度を調査」(2022年11月17日、足立智和記者)が選ばれた。
全国の地域紙から応募があった約200の記事から選考。審査員は、加来耕三さん(歴史家・作家)、小山薫堂さん(放送作家・脚本家)ら5人。「Googleアワード」は、Google News Initiativeが選んだ。授賞式は12月1日、東天紅上野本店(東京・台東区)で。
▢ 藩主の「抜け道」伝説 直線距離300メートル? 「入ったことある」証言も 語り継がれる”うわさ”の真相は
田畑知也記者
「江戸時代に掘られた、藩主の抜け道があるらしい」—。ここは織田家にゆかりがある、兵庫県丹波市柏原町。この“伝説”は、かなり多くの地域住民が知っており、代々語り継がれてきた。みんな聞いたことがあるのに、本当かどうかは誰も知らない。そんな伝説の真相に迫りたい—。この記事の出発点は「好奇心」だ。
江戸期に織田信長の血筋が藩主を務めた柏原藩の政庁が、今も「柏原藩陣屋跡」として一部残っている。冒頭に記した抜け道は、この陣屋跡の床下から伸び、直線距離にして300㍍先の神社につながっているという噂だった。有事の際、藩主が逃げるのに使うという。
この地域の人なら、両者の距離感などを理由に、「抜け道は掘れないだろう」と思うと同時に、「もしかしたら」という2つの感情を併せ持っている。
このロマンをかきたてる事実として、過去、陣屋跡の床下に、人が入ることのできる穴があったと証言する地域住民が多数いることだ。おおよそ60歳以上の人は、子どものころに「入ったことある」と証言する。
国の史跡となり、縁の下に板が張られている今、抜け道どころか、穴の存在は確認できなくなっている。様々な資料をこまめに当たったり、できるだけ多くの地域住民に証言を求めるという、記者本来の仕事が取材のカギになった。
おそらく、真相には届かないだろう—。正直、取材当初から思っていたが、読者からは反響をいただいた。「井戸端会議の主役になれる」をうたう弊社の記者として、地域住民に明るい話題を提供できたと思っている。
▢「丹波栗」一番人気 秋の味覚検索人気度 Google Trendsから分析
足立智和記者
食の宝庫と言われる丹波。中でもにぎわうのが「味覚の秋」。全国に名声が轟く丹波黒枝豆、丹波栗、丹波松茸が勢ぞろいする。これらの人気度を、「Google Trends(グーグル・トレンド)」で調べたことで、これまで分からなかった世間の興味の動向を明らかにできた。
「丹波黒枝豆」、「黒枝豆」は検索場所が近畿地方に集中。東京や神奈川など、首都圏の住民の関心度は今ひとつということが示唆された。東日本では、山形県の「だだ茶豆」に知名度が劣っている。
読者から「おいしさがまだ広く知られていない東京で、まだまだ販売を伸ばせる余地がある。商売のヒントをもらった」との声が届き、分析の仕方によって、非常に有効に使えることを実感した。
世間の丹波の黒枝豆の関心は、10月に集中していることは、「Google Trends」の検索結果から明らかだ。生産者の販売が10月に集中しているためだ。しかし、黒枝豆の旬は長い。産地の生産者は、11月に黒枝豆を食べている。栗のようにほくほくしていて、甘く濃厚だ。
丹波にはまだ世に出ていない、おいしい食べ物がある。引き続き、産地の魅力を発信し、農業者を勇気づける記事を書いていきたい。