兵庫県丹波市春日町国領で、喫茶店「純喫茶国領」がオープンした。一般的な純喫茶とはひと味違い、酒類も提供する。文字通り、店内にはどこか懐かしい空気が流れる。営むのは同市市島町喜多で「市島製パン研究所」を開く三澤孝夫さん(62)。「外食産業のオートメーション化が進む今だからこそ、純喫茶の文化が必要。人と人とのコミュニケーションは絶対になくしてはいけない」と力を込める。土―月曜に営業している。
こぢんまりとした店内(約25平方メートル)のレコードプレーヤーからは、大瀧詠一やビートルズ、山口百恵など1970―80年代の曲が流れる。座席はカウンター8席のみ。
三澤さんが神戸市のコーヒー豆焙煎所から取り寄せた豆でひくこだわりのコーヒーが自慢。バドワイザーやコロナなどの外国ビール、ハイボールなどのアルコール類も置いている。
また、カレーやナポリタン、ミックスサンドなどの王道メニューをそろえる。食べ応えがあり、見た目も”映える”デザートも充実。「モーニング」もある。
◆「客は空間楽しむ」 夜は「居酒屋状態」
神戸で生まれ育った三澤さん。学生時代は純喫茶でアルバイトをし、「周りは純喫茶だらけで入り浸っていた。朝行ったら顔見知りだらけ」と懐かしむ。時代は流れ、今や飲食店ではタブレット一つあれば無言で注文できるようになったが、機械化の流れに疑問を抱いていた。
厨房に立つ自身と客、客同士が気軽にコミュニケーションが取れる、古き良き「純喫茶」の文化を守りたいと開業を決心。水道店だった物件の1階を改修した。
客同士の距離が近く、たわいもない会話が弾む。メニュー表にはない料理の注文にも応える。人生や事業の相談に来る客も多い。夜は地元客でにぎわい、「居酒屋状態」(三澤さん)。飲酒後の“シメ”を求める客に応え、各地のご当地インスタントラーメンも用意した。三澤さんは、「お客さんは空間を楽しみに来ている。大手と小さな飲食店が同じ考えではいけない」と強調する。
◆開店準備を支援 ファンに手応え
三澤さんと共に厨房に立つのが松岡伸郎さん(52)。自慢の餃子を提供しつつ、国領で餃子店を開業しようと準備を進めている。
神戸で餃子店を営んでいたが、コロナ禍で業績が悪化。知り合った三澤さんが手を差し伸べ、国領の地での再起を勧めた。神戸の店は締め、国領の空き倉庫を改修して今年度中に開業予定。
三澤さんは「オープン前から地域の人としゃべれてファンが付き、市場調査もできる」とし、松岡さんも「覚えていただけたお客さんもいて、お土産に買ってくれるリピーターも多い」と手応えをつかんでいる。
営業時間は、土曜午後5―9時、日曜午前8時―午後9時、月曜午前8時―午後6時。「モーニング」は11時まで。