市木「桜」を未来へ ビジョン策定へ 検討委員会立ち上がる

2023.12.31
地域

酒井市長から委嘱状を受け取る「丹波篠山市桜ビジョン検討委員会」の委員=兵庫県丹波篠山市網掛で

兵庫県丹波篠山市は、市木の「桜」を将来につなげるための保護管理や、観光・まちづくりなどへの活用策を考えようと「市桜ビジョン検討委員会」(11人)を立ち上げ、このほど、四季の森生涯学習センター東館で第1回会議を開いた。委員長にささやま桜協会理事長の酒井克典さんを、副委員長に市造園組合長で樹木医の小山雅充さんを選んだ。市内の公共の場所にある約1万本の桜の管理状況について報告があったほか、▽理念(考え方)▽ビジョン(目指すべき姿や目標像)▽戦略(ビジョン達成のための方策)―を決める、という検討委の役割を確認するなどした。

市内の桜の状況について事務局の市商工観光課は、兵庫県が1991―2000年度に河川沿いに桜を植樹する「ふるさと桜づつみ回廊」事業を推奨したため、市内でもこの時期に多くのソメイヨシノが植樹されたと振り返り、管理における課題として、樹勢低下や枯死の原因となる伝染病「てんぐ巣病」のまん延を挙げた。治療には病気にかかった枝の切除が有効だが、高所での作業となり、専門的な機材や技術も必要で、適切に管理できる人材も不足しているとした。

また、同協会は、12年度から桜を守り育てるエキスパート「桜守」の認定制度をスタートさせ、認定に向けた養成講座を開催して、これまでに45人を認定している。しかし、その半数以上が75歳以上と高齢化している現状を伝えた。てんぐ巣病治療に高所作業車を用いた場合、1本当たり1万円ほどの費用がかかり、治療しても再発することがあると説明した。

これに対し委員からは、「市は桜の管理費に年間100万円を計上しているが、この額で全て治療するのは無理。観光エリアなど人目につく桜を重点的に治療・管理し、ダムの奥などの病気の桜は伐採といった思い切った管理が必要では」といった意見もあった。

当初、来年3月末までに3回の会議を開き、桜ビジョンを策定するスケジュールだったが、委員から「わずか3回集まるだけでは形だけの結果に終わってしまう」との指摘があり、「てんぐ巣病はなぜまん延しているのか、どのような環境で発生しているのかといった現場を見ないと、正確なビジョンは出せない」と、現地見学を行うことを提案した。

これを受け、酒井隆明市長は、「桜を守ろうと募ったふるさと納税を通じたクラウドファンディングで約270万円集まった。多くの皆さんが丹波篠山の桜に関心を持たれている表れ」とし、「『形だけつくれば良い』ではいけない。検討期間を延長するので、皆さんには議論を尽くしてもらい、良いものを作っていただきたい」と返した。

酒井委員長は、「まず理念をしっかり共有しないと進まない。計画を作ることを目的としてはいけない。ビジョンを実現し、50年後、100年後も丹波篠山の桜を愛でながらお酒が飲める、そんな計画を作っていきたい」と話した。

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