愛着深いキリン型すべり台 住民の声で移設実現 

2024.02.21
たんばの世間遺産地域注目

保護者が見守る中、キリン型のすべり台で遊ぶ幼い子どもたち=兵庫県丹波市山南町谷川で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市山南町谷川の久下自治会館グラウンドの一角に設置されているキリン型のすべり台です。

以前は旧山南中央公園に設置されており、住民の間で「キリン公園」と呼ばれるほど、なじみが深かった。新山南中学校舎の建設に伴い、公園は閉鎖されたが、すべり台は住民の要望によって移設がかなった。

高さ約3メートル。すべり台はなだらかなカーブで、内側には、子どもが秘密基地感覚で入れるスペースもある。黄色の外観の、テーマパークに登場するキャラクターのようなデザインで、存在感を放つ。

20年ほど前に公園に設置。公園閉鎖が決まり、すべり台の取り壊しも持ち上がったが、地区住民から「たくさんの思い出があり、小さな子どもたちも寂しがっている。何とか、自治会館に置いてもらえないか」という声が上がった。

久下自治振興会役員や谷川住民らで移設を議論。安全、耐久性の観点から、子どもが遊ぶ際の責任は保護者に委ねることを条件に、市から同振興会への無償譲渡が決まった。地元の造園業者がトラックで運び、2021年夏に移設。以来、補修をしながら、使い続けている。

周辺に公園がないことから、暖かい時期には、幼い子どもと母親が毎日のように足を運ぶ。生まれも育ちも谷川で、1歳の長女、梨乃ちゃんと訪れている森脇智歩さん(33)は「私も中学生の姪っ子も、小さな頃から見てきた。愛着がある」と笑顔。

同振興会の清水邦泰会長(71)は「孫を連れていって遊ばせていた」とほほ笑む。移設以降、会館を利用する若い女性が増えたといい、「子どもは楽しく遊べて、保護者はほっとできる場所になっているのでは」と話している。

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