芸術的な”巨大のり面” Xで「いいね」2万件超つき話題に 設置の背景は?

2024.02.19
地域注目

芸術的と話題の巨大なのり面。空間がゆがんでいるような不思議な感覚に陥る=兵庫県丹波市市島町徳尾で

撮影した写真にX(旧ツイッター)で「いいね」が2万件以上つき、「芸術的」と話題になった巨大なのり面が、兵庫県丹波市市島町徳尾にある。麓から山頂まで約140メートルにわたり、格子状のコンクリート枠が不規則に続く。空間がぐにゃぐにゃとゆがんでいるような不思議な感覚に陥る。県によると、2014年8月に同市を襲った豪雨災害後、土砂崩れを防ぐために設置したという。

撮影したのは、丹波地域の公式観光情報ポータルサイト「ぶらり丹波路」の編集を手がけ、「産業遺産写真家」として各地に足を運ぶ前畑温子さん(40)=神戸市=。サイトに掲載する魅力的な写真を探す中で偶然発見した。

巨大のり面が設置されている山=兵庫県丹波市市島町下鴨阪で

4年前、撮影写真を自身のXに投稿したところ、「いいね」が2万4000件も付く大反響を呼んだ。メロンの断面や、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に登場するキャラ「キング・クリムゾン」などを連想した、とするリプライ(返信)もあった。

先々月には、海外在住者とみられるアカウントが前畑さんの撮影写真をリツイートした投稿に、1500件に迫る「いいね」が付き、再び多くの人の目に触れた。

前畑さんは「入り組んだ構造で、美しさと機能が両立されている。今まで見たのり面の中で一番すごい」と舌を巻く。

丹波市は2014年8月16、17日、24時間の最大雨量414ミリ、1時間の最大雨量91ミリという記録的な豪雨に見舞われ、土砂崩れや河川の氾濫など甚大な被害を受けた。市島町は特に被害が大きく、1人の尊い命が奪われた。県によると、こののり面が設置されている斜面でも土砂崩れが起き、1戸が全壊、2戸が半壊した。

翌年8月から約1年間、急傾斜地崩壊対策事業として、土砂崩れが発生したこの山の計3カ所で、コンクリートで表面を固める工事を実施。地表に雨が当たり、土が削れて崩れるのを防ぐ働きがある。こののり面は、崩れた谷の形に沿って築造され、意図せず不規則な形になったという。

前畑さんは「一見、面白いと思うものでも、実は防災の役割を果たしている。歴史を伝える『生きた教科書』とも言えるのでは」と話す。

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