歴史美術館内に「法廷」 元裁判所の面影残し「模擬裁判」もOK

2024.04.15
たんばの世間遺産地域歴史注目

かつての裁判所の面影を残す「法廷」=兵庫県丹波篠山市呉服町で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、丹波篠山市呉服町にある市立歴史美術館内の「法廷」です。

かつての裁判所の建物を活用した歴史美術館には、裁判所の「法廷」が残されている。来館者が自由に入ることができ、「模擬裁判体験」も可能。元法廷が公開されているのは全国でも珍しいという。

裁判所の起源は明治3年(1870)にさかのぼり、現在の建物は明治24年(1891)の建築。正面には入母屋造の車寄せがあり、左右対称で、シンプルかつ重厚感がある。篠山区裁判所、篠山治安裁判所、神戸地裁篠山支部などと改称しながら、国内最古級の木造裁判所として昭和56年(1981)まで使用された。

面影を今に伝える法廷は、裁判官が並んだ法壇や、検察官、弁護人、被告、傍聴の各席などがほぼ当時のまま残る。裁判官の法服を着ることもでき、裁判体験用の台本も用意している。

悲喜こもごもの裁判が行われていたとみられるが、同施設は、「どのような裁判が行われたかは資料がない。ただ、『小学校時代に社会見学で裁判を見に来た』という人もおり、その時は、『鶏を盗んだ』という内容だったそう」と話す。

かつては南に向いて建っていた裁判所。道路建設に伴い、「解体か、保存か」でけんけんごうごうの議論が交わされた末、保存が決まり、曳家工法で90度回転させて西向きになり、南北の道ができた。

今、丹波篠山は古いものを大切にする町になったが、この建物がその第一歩だったのかもしれない。

ちなみに家族やカップルが模擬裁判をする際は、ほとんど男性が被告人、女性や子どもが裁判官だとか。

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