戦国丹波の31家探る 家紋研究家が「国衆伝」発行 弊紙連載もとに加筆

2023.08.29
地域歴史注目

出版された「戦国丹波国衆伝」を手にする田中さん=兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市住吉台の家紋・戦国研究家、田中豊茂さん(70)が、兵庫と京都にまたがる旧丹波国の武家についてまとめた「戦国丹波国衆伝」を、丹波新聞社から出版した。丹波新聞紙上で2020年から22年まで連載した「丹波の戦国武家を探る~家紋・名字・山城から~」(全22回)をもとに、大幅に加筆。田中さんは「個々の名字の歴史を家紋、山城とともに探った本は唯一では。丹波の中世の歴史が俯瞰できる一冊になったと思う」と手応えを感じている。

兵庫丹波(丹波市・丹波篠山市)では▽足立▽芦田▽余田▽吉見▽荻野▽赤井▽久下▽和田▽中澤▽酒井▽細見▽畑▽荒木▽波々伯部▽波多野▽籾井▽内藤▽小畠―の各氏と大芋衆を取り上げ、京都丹波(福知山市・綾部市・亀岡市・南丹市・京丹波町など)は▽夜久▽桐村▽塩見▽上原▽大槻▽志賀▽上林▽片山▽須知▽蜷川▽川勝▽宇津―を掘り下げた。新聞連載は兵庫県内の19家のみだったが、「『丹波』と名乗るからには京都丹波を外すわけにはいかない」と、京都府内の12家も改めて調査した。

「鎌倉から戦国初期までの時代を生きた武家の歴史にとりわけ興味がある」と田中さん。「丹波の戦国時代といえば、織田信長の命を受けた明智光秀と丹波の国衆の戦いが語られることが多いが、そこに至るまでにも乱世を懸命に生きた国衆たちの歴史がある。丹波の戦国武家は波多野、赤井だけではないことを知ってほしい」と話す。丹波では、いわゆる生え抜きの戦国武家はほとんどおらず、「ルーツはほぼ関東にあり、土着していく過程がおもしろい」と言い、京都と隣接していることから、「京で起きた政変のあおりを受けるなど、京の影響が大きいのが丹波の特徴」とみている。

田中さんは25年以上、各地の墓を訪ねるなどして「足で」家紋調査を続けてきた。ホームページ「家紋World」は1996年から開設し、日本家紋研究会の理事なども務める。

A4判モノクロ124ページ。印刷をきれいに仕上げるため、家紋は全て田中さんがデザインソフトで書き起こした。読みやすくするため活字は大き目にしている。

1冊2000円(税込み、送料別途370円)。「家紋World」のサイトから注文できる。

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