障がいのある人が、自分の力で生きていく力を養う生活介護事業所「ら・創作工房 KOKONI」が今月、兵庫県丹波市市島町上牧に開所した。利用者にアート作品の制作や料理といったさまざまな創作活動に挑戦してもらい、可能性を引き出す。事業所を運営する一般社団法人「ワンスリー」(同町上牧)の高見忠寿代表(41)は「利用者の『やってみたい』という気持ちを後押しし、自己肯定感にあふれ返ってほしい」と願う。生活介護に特化した事業所は丹波市内で初めて。
JA直営のスーパーだった建物を改装。原則、平日午前9時―午後3時に開く。現在、自閉症や知的障がいがあったり、車いす生活を送ったりしている市内の20歳代6人が利用する。
スタッフは4人。看護師や介護福祉士、栄養士の資格を持つスタッフが、マンツーマンに近い形で食事や排せつなどをサポート。利用者の送迎も担うため、家族に負担はかからない。
利用者は自由な発想で、段ボールやプラ板、折り紙といった身近な素材を使ってアート作品を制作し、集中力を伸ばす。料理は、利用者からリクエストがあったというバナナプリンケーキに挑戦しており、協調性を養う。完成品は、同事業所や地域などで販売。工賃も支払われる。
パソコンを操作し、同事業所が主催するイベントのチラシ作りなどにも励む。また、スタッフが付き添いながら買い物をしたり、電車に乗ったりして、日常生活で必要な行動や知識も学ぶ。作業中に関心が別のことに向けば、無理をせずに関心のあることをしてもらうなど柔軟に向き合う。
利用者の男性(29)は「やりたいことをやってみて、『あ、こんなことができるんだ』と気付けるのがうれしいし、楽しい。もっと頑張ろうと思える」と笑顔を見せる。
同法人は、9年前から就職が困難な障がい者がパン作りに励む障害者就労継続支援B型施設「ら・パン工房 来古里」(同町上牧)を運営。高見さんは利用者と接する中で、手先の器用さや周りを見る能力、好奇心の高さに可能性を見出していた。
一方で、作業がパン作りに限られてしまうことにジレンマを感じており、「もっと力を生かし、サポートしたい」と、地域に密着し、多くの作業に柔軟に挑戦できる新たな生活介護事業所の開所を決めた。
「KOKONI」という事業所名には、仕事をして賃金をもらえるような「個」の力を身に付け、「ここ」(地域)で生きていってほしいという思いを込めた。
高見さんは「飛び抜けた力を持っている人もいる。関心を持ったことをしてもらって、自分の力を探し、発見してもらえる場になれば」とほほ笑む。