宿場町の面影を残す兵庫県丹波市青垣町佐治地区で空き家活用に取り組むNPO法人・佐治倶楽部(出町愼理事長)が、同県伝統工芸品の丹波布の保存会2代会長で、同町出身の細見綾子が俳人となる道を開いた医師、故・田村菁斎邸と併設の旧田村医院を、新たに移住者向けの店舗兼住宅として貸し出す。「興味がある人は相談を」と話している。
母屋(延べ床面積約200メートル)は1、2階とも一般的な住宅より天井が高く、2階には回廊がある。同法人が、くみ取りだったトイレに合併浄化槽を入れて水洗化したほか、木製建具の隙間から侵入していた雨を防ぐ補修をした。併設の医院跡は平屋建て(約60平方メートル)。建具などを取り外しており、改修、設備などは入居者が用意する。
10台程度の駐車スペースも併設する。家賃は5万円程度を想定。別途、光熱水費が必要。
菁斎(1886―1967)は俳号。本名は徳治。地元の名士で、丹波布の復興に携わった。俳句結社「倦鳥」同人。1929年、綾子が医師の夫を亡くし、自身も肋膜炎を発病したため同町東芦田の生家に帰郷した際に主治医となり、綾子に俳句を勧めた。田村邸で開く句会に誘い、「倦鳥」主宰となる松瀬青々を紹介したことで綾子は大きく羽ばたいた。
菁斎の没後、暮らしていた妻が亡くなってからは長く空き家になっていた。子孫が大切に管理し、築年数は不明ながら戦前に建てられた木造2階建ての母屋はほぼ手を入れる所がない良好な状態で、同物件を所有する菁斎の子孫から同法人が借り、活用できることになった。
出町理事長は「気になっていた物件をお借りすることができた。見学会を開いたり、イベントに使ったりできたら」と話している。