若者と農村の未来語る 神院大が市民公開講座 メディアの役割「共感生む」

2024.11.26
地域注目

農村の未来とローカルメディアについて語り合ったパネルディスカッション=兵庫県丹波篠山市細工所で

神戸学院大学現代社会学部現代社会学科の市民公開講座「若者とローカルメディアでつくる明るい農村」(丹波新聞社共催)が17日、兵庫県丹波篠山市のハートピアセンターで行われた。同市をフィールドに農村の活性化策を考えている学生や高校生らが活動発表を通じて地域に還元するとともに、明るい農村づくりを目指す上で丹波新聞のようなローカルメディアの役割について考えるのが狙い。講座の模様はユーチューブでも配信され、多くの人が聴講した。

まず、同県小野市の鋳型中子製造業「藤原」の藤原弘三さんが基調講演。本業で錫製品のブランドを立ち上げる傍ら、地元加東市の酒米で、集落名を冠した日本酒造りに取り組んでいる様子を報告。「1000円で売っている酒でも、田んぼの真ん中に畳を敷いて、そこで飲んでもらうような仕掛けを体験も含めて提供すれば、3万円でも買う人が出てくる。ここにしかない物を作り、いかに認知につなげるかが、明るい農村の未来につながる」と述べた。

事例発表では、同学科講師の菊川裕幸さんが、丹波篠山市で取り組んだ山の芋のつるを日除けカーテンにする「山の芋グリーンカーテン」や、放置竹林をチップにして堆肥や飼料にする取り組みと、その研究成果を発表。新聞が報じたことで「取り組みが地域に届き、生徒の自信になった。また、地域からも評価され、新たなつながりもできた」と述べた。

基調講演する「藤原」の藤原弘三さん

丹波新聞社の森田靖久記者は、人口減に伴い新聞の購読者数も減少している現状に危機感を示した上で、ネットでニュースを配信する取り組みを紹介。「ネットの普及により、都市と地方の差がなくなる一方で、身近な“地元”が切り捨てられている。地域の当たり前の情報を共有することで誇りや愛着を醸成し、また、地方に目を向け始めている都市の人の関心を集めることにローカルメディアの役割がある」と期待を込めた。

サルの獣害対策を学ぶ篠山鳳鳴高校の油淺然良風さん(2年)は、サルの獣害を広く知ってもらうためのパンフレットを作成中とし、「出来たパンフレットをどこに置き、どうしたら多くの人に興味を持ってもらえるかを、これから考えていきたい」と発表した。

同学科の菊川ゼミで学ぶ新川裕士さん(3年、篠山鳳鳴高出身)ら学生3人が、西紀北地区などで実施した「山賊ワイルドラン」を紹介。「地域住民を十分に巻き込むことができず、地域とランナーの交流が進まなかった」と課題を述べた。

パネルディスカッションには、藤原さんと、事例発表を行った4人が登壇。若者が取り組みの中で課題に感じた「地域を巻き込む」ことについて森田記者が「沿道添いの応援、子どもがあめを渡すなど、ABCマラソンが参考になるのでは」とアドバイス。「興味のない人への周知」について藤原さんが「農家も、地域も、サルさえも喜ぶ方法を考えては」と発想の転換を促した。

取り組みを地域に伝え、つながりをつくるという点で改めてメディアの役割を問われた森田記者は、「SNS(交流サイト)で誰でも自らで発信できる時代。だが、取材時には発信する側が気づいていない良さに記者の立場から気づけるときがある。第三者の目としての役割がある」と話すと、新川さんは「取材を受け、改めて自分たちの取り組みを再考する機会になったことがある」と応じた。藤原さんも「いきなり『僕ってすごいでしょ』と言っても誰も信用しない。どんな取り組みも、仕事でも『共感』がすごく大事。新聞社に言ってもらうことで共感が生まれるのでは」と述べた。

詳細はユーチューブで。

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