兵庫県丹波篠山市が、生徒数の減少で、県教育委員会が来年度に発表する「発展的統合校」の対象になる可能性がある市内の高校(篠山鳳鳴、篠山産業、篠山東雲)の在り方について検討を行っていることを巡り、酒井隆明市長は現段階での考え方として、「3校存続が市民の願い」を前提に、統合が避けられないならば、「産業と東雲を統合して当面は鳳鳴との2校体制とし、将来は(両校を統合した)1校にすることを求める」との意見書をまとめた。今後、最終的な方針を取りまとめ、年始早々にも県に伝えるとしている。
このほど開かれた市議会で酒井市長は、「3校は市の宝・財産であり、できうる限り存続してほしいのが市民の多くの願い」とした上で2校体制を求める案を示し、「さらなる教育環境の充実を図ってもらえるよう充実策を提言する」とした。さらに10年後の2034年には、市内の高校1年生になる年齢の人口は240人で、鳳鳴(160人)と産業(同)の定員を合わせた320人を大きく下回っていることから、「学力、活力の維持や部活動の充実の観点からすると、将来は1校に統合すべきと考える」とした。
酒井市長によると、これまでの議論に加え、9月20日―10月10日に、市内の保育園、幼稚園、こども園、小、中、特別支援学校に通う3962人を通じて保護者に意向調査を実施。回収率は12・7%(503人)と低水準だったが、▽「1校にする」=26・4%▽「2校にする」=38・8%▽「3校とも存続」=21・3%▽「わからない・いずれでもない」=13・5%―だった。
また、ふるさと一番会議の参加者や中学校PTA役員にも同様のアンケートを実施(回収率43・2%、194人)。こちらは、▽「1校にする」=49%▽「2校にする」=36・6%▽「3校とも存続」=7・7%▽「わからない・いずれでもない」=6・7%―となった。
ほかに高校のあり方検討会の委員や教育関係者など67人にも聞き取りを行ったところ、▽「1校にする」=46・3%▽「2校にする」=32・8%▽「3校とも存続」=4・5%▽わからない・いずれでもない」=16・4%―だった。
これらの状況を受け、酒井市長は、「2校維持を求める意見が多かったと判断した」とした。また、産業と東雲が統合する場合においても、「農業や自然環境への取り組みなど、東雲の良さは引き継いでほしい」とした。
将来において1校に統合する場合、市外からもめざされる質の高い、次世代における大切な内容を取り入れた特色のある教育を提供し、「篠山藩に由来する『鳳鳴』の名前を残す」「校舎はJR篠山口駅周辺に新築」などを望む市民の声に配慮するよう求めた。
酒井市長は、「市内の子どもたちが市内の高校で切磋琢磨し、将来を担ってもらうことが市にとっても良いこと。学力向上、部活動などで魅力的な、選ばれる高校になるために、市にできることは協力したい」と話した。
一方、市議会本会議で一般質問した荒木礼子議員は、「2校案をこちらから提案するのではなく、3校存続の強い姿勢を示してほしい」とし、東雲の市立化や、特色ある学科を設置して生徒の全国募集を行うことを県に要望するよう求めた。
酒井市長は、「私も県議時代、産業の分校だった東雲をなくすという方針に対し、残すことを強く訴え、独立校になった」とし、「県教委の計画では、一つの市に3つとも残すというのは当時よりもさらに難しい。統合されるならば、最善の策として市民の総意とまではいかないまでも、できるだけ皆さんが理解されるような考えをまとめたい」とした。
市立化については、他県の例では年間1億数千万円の維持費がかかっていることから、「結論はすぐに出せない」とした。
また、「定員の半分に満たない状況が2年続けば募集を停止するのが県教委のルール。その上での『廃校』ではなく発展的統合になるよう努力していきたい」とした。
県教委の高校教育改革第3次実施計画では、2028年度に丹有地区内10校のうち4校を2校に再編予定。来年度に統合校が発表される。酒井市長は、「市に権限はないが、市としての考えを伝える」としていた。