フジの名所として知られる兵庫県丹波市市島町の白毫寺(荒樋勝善住職)境内にある七福神の石像4体に22日、手編みのマフラーが贈られた。寒い冬を温かく過ごしてもらおうと、近くに住む女性が寄進した。1体が思いのほかふくよかで、用意したマフラーが「寸足らず」。女性は自身がつけていたより丈の長いマフラーを差し出し、首元を温めた。
近くに住む藤田洋子さん(77)。脳梗塞の後遺症で手足にまひがあり、身体機能の回復と気分転換を兼ね、車窓から石像に手を合わせる参拝を続けていた。
思うように歩けないストレスから、立派な足を見せる石像に「自分の足と取り換えてほしい」と願い、健康な人がすたすたと歩く姿に「うらやましく、腹が立った」。そんな気持ちも「年に250日参拝」(藤田さん)するうちに消えた。「優しい気持ちになれた」
昨冬の参拝時、震える寒さに「七福神も寒かろう」と気づき、お礼にマフラーを、と思い立った。編み物が得意な親友、荒木美津子さん(77)に制作を依頼。春から、紫、桃、水色など7本を編み上げた。
土台から4メートル近くある石像に藤田さんの友人の西浩太さん(24)が登って設置。「恵比寿神」「毘沙門天神」「弁財天神」とつけた後の4体目、ひときわ肉付きの良い「布袋尊神」で用意していた紺色のマフラー(長さ約1・3メートル)が、首一周に届かない事態が発生。「これなら届かへんか」と藤田さんが愛用のベージュのマフラーを差し出し、西さんがマフラーを引っ張って何とか取り付けた。
藤田さんは、「『笠地蔵』を思い出した」と冗談を飛ばし、「車の中、真正面から拝んでいたので、奥行きがこんなにあるとは思わなかった」と苦笑い。「リハビリをがんばって、来年は今年より長いマフラーを自力で編みたい」と話していた。
丈の加減でネックウオーマー、あるいはネクタイのように見えるマフラーを巻き、いっそう愛嬌ある顔立ちになった七福神は、にこやかに山里の安寧を祈っている。