兵庫県丹波篠山市立さぎそうホール(340席、同市今田町今田新田)を活用した映画館「メガヱビス。」を運営する株式会社コドルニス(同県丹波市氷上町)は、同ホールに新型映写機を導入するため、インターネットを介して支援を募るクラウドファンディング(以下、クラファン)を行っている。支援のリターン(お礼)には、同映画館で好きな映画を2週間、上映できる「一日支配人」など映画ファン垂ぜんのユニークな企画も用意。同社代表で映画監督の近兼拓史さん(63)は、「新型映写機が導入できれば、今後10年間は丹波篠山を『映画館のあるまち』にでき、地元で新作映画を楽しんでもらえる。力を貸してほしい」と呼びかけている。
近兼さんによると、現在の映画業界では暗号化され、コピーできない映像での上映システム「DCP」(デジタルシネマパッケージ)の導入が進んでいる。多額の予算をかけて製作した映画が簡単にコピーされ、無断販売・配信される被害が後を絶たなかったためで、暗号解読機能が付いた新型映写機でないと上映できない仕組み。新作映画の約90%がDCP配給になっているため、新型映写機がない映画館は新作の上映ができない状況になっているという。
新型映写機の導入は工事費用込みで約1000万円。クラファンで支援を募り始めた近兼さんは、「3分の1でも応援いただけたら、残りは自力で何とか」と、目標額を330万円に設定している。
支援の最高額は30万円で、一日支配人がお礼。自分が好きな映画を1本、2週間にわたり上映できる権利を贈る。初の試みで、他では聞いたことがないという近兼さんは、「『どうしてもこの映画を上映してほしい』という問い合わせがあったことを思い出し、しゃれでお礼に。すでに2件の申し込みがあって驚いている」と話す。
支援20万円のリターンは好きな映画を貸し切りで上映できるもの。「一日支配人が大好きな映画を人にお薦めするなら、貸し切りは自分や家族、友だちだけで楽しむイメージ」という。
支援は2000円からで、お礼のメッセージやオリジナルグッズ、映画観賞券、丹波焼のアクセサリー、近くのこんだ薬師温泉ぬくもりの郷の入浴券なども用意している。
近兼さんは、丹波市氷上町成松で映画館「ヱビスシネマ。」を運営。今年4月からは年間数日しか有料利用がなかった同ホールを映画館に転用しており、市内では、城下町にあった映画館が1970年に火災で焼失して以来、55年ぶりとなる映画館復活となった。
自力で音響機材を購入し、ボランティアスタッフの協力も得ながらの活動。さらに空調が故障しているため、春(3―6月)と秋(9月中旬―11月中旬)の半年の稼働で、現在のところ一日の来場者数は10人程度という。それでも、「ヱビスシネマの開館当初はもっとひどかったけれど、今では年間1万人を超えるようになった」と笑う。
一日支配人の支援があったこともあり、18日時点で60万円超の支援を調達。「新作映画が上映できるようになれば、丹波篠山の一文化拠点になる」と言い、「子どもたちにも地元で映画が見られる機会を作ってあげたい。とにかく本気でやっているので、『応援してあげるわ』と言ってもらえるように頑張りたい」と意欲を燃やしている。
クラファンサイトは「MOTION GALLERY(モーションギャラリー)」を使用。「モーションギャラリー さぎそうホール」などで検索を。9月30日まで。























