たんば恐竜博物館教育普及専門員 稲葉勇人さん(三田市)

2025.08.10
たんばのひと

化石から進化の道筋を

化石に残るタンパク質を染色し、直接見ることができる手法を世界で初めて開発し、論文を発表した。現在は種を分類するのに化石の“見た目”などが主な頼りになっているが、抽出したタンパク質を解析することで、高精度な種同定が可能になる。

愛知県蒲郡市出身。恐竜に興味を持ったのは、「業界的には遅い小学2年生」と笑う。両親に買ってもらった恐竜図鑑が、その後に歩む道を決めた。

恐竜化石を扱った博物館や特別展に足を運ぶ日々が始まった。地元に首長竜や太古のクジラの化石を展示していた「生命の海科学館」があり、毎日のように通い詰めた。中学生の時に職場体験をしたのも、この科学館。高校生の時には、ワークショップの手伝いを頼まれたという。

岡山理科大学生物地球学部の恐竜古生物学コースに進学。大学院に進み、学芸員になるため、全国の博物館を50館回った。その一つが、現在、自身が教育普及専門員を務める、たんば恐竜博物館(当時・丹波竜化石工房)。岡山から自転車で訪れた。

化石のタンパク質を染色する世界初の手法を開発した研究には、大学4年時から本格的に携わった。大きく立ちはだかったのは、“試料汚染”という壁。抽出したタンパク質は、本当に化石由来のものであるかどうか。初めて抽出に成功したと思われた際も、解析すると自身のケラチン(タンパク質)だった。その後、1年間は結果が出ず、不安が募ったが、細かく改善することで手法を確立していった。

今後、進めるのは応用の部分。「実物の化石を使い、より直接的な情報であるタンパク質を抽出して解析することで、正確な分類をし、進化の道筋を明らかにしたい」。27歳。

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