15歳、フランスで黒豆発信 栄養価やレシピを紹介 伝統のデカンショ踊りも披露

2025.08.12
地域注目

黒大豆や地元の魅力を発信するため、フランスに旅立った西尾さん(右)と、現地でホストファミリーを務めるナタンさん=兵庫県丹波篠山市小枕で

兵庫県丹波篠山市在住の三田祥雲館高校1年、西尾世良さん(15)が今月2日から9月6日まで、県の「HYOGO高校生『海外武者修行』応援プロジェクト」を活用し、独りでフランスに滞在して現地の人たちに丹波篠山特産の黒大豆を紹介する取り組みを行っている。味はもちろんのこと、栄養価の高い“スーパーフード”であることを説明し、世界に通用する可能性を秘めていることも科学的に伝える。伝統のデカンショ踊りも披露する予定という。西尾さんは、「黒大豆を軸に日本とフランスの食文化をつなぎ、丹波篠山や兵庫の魅力を発信したい」―。熱い思いを秘めた15歳の挑戦が始まった。

フランス南西部の都市トゥールーズでホームステイ。ホストや地元の人との交流を図りつつ、食文化が深く、ベジタリアン(菜食主義)が増えているとされる同国の人たちに黒大豆の可能性を伝える。西尾さんは、「フランスは豆が日常の主役。黒大豆はベジタリアンの人にもぴったりの食材で、もっと世界で活躍できるものだと思う」と特産への思いを語る。

まずは現地のコミュニティーで、イソフラボンやポリフェノールなどが含まれる黒大豆が、現地の人がよく食べるひよこ豆などと比較していかに体に良いかをデータで示しながら紹介する。

幼い頃に、「身の回りの全てが直結している」と気づいた「理科」が好きで、将来の夢は、地球温暖化や気候変動に対応するための解決策を研究する「環境科学者」。水の使用量や温室効果ガスの排出量などから、科学的根拠に基づいた黒大豆の環境的利点も説明すると言い、科学者としての活動の第一歩も兼ねる。

得意の料理の腕を生かし、現地に持ち込んだ黒大豆を使った料理やスイーツの試食会も開催。直接、舌で味覚を堪能してもらう。

また、ホストファミリーや現地の人たちに黒豆の歴史や、兄から指南を受けたデカンショ踊りも披露し、地元の魅力を発信。黒大豆を食べることに、「まめに暮らす」という思いを込めた日本の価値観も伝える。

県のアンバサダー(大使)の“顔”もあり、大阪・関西万博に合わせて実施しているひょうごフィールドパビリオンの一つの「ゆめの樹」(丹波市春日町)で学んだ黒豆わらび餅も現地で再現する。

1カ月超の日程で、ホストのサポートがあるとはいえ、基本的に独りでの活動。フランス語は自己紹介程度しかしゃべれないが、「緊張するけれど、英語で会話しながら、フランス語も吸収したい」と言う。

昨年10月から母の雅子さんが代表理事を務める交流施設「アグリステーション丹波ささやま」(同市小枕)の事業で、食事と宿泊場所を提供する代わりにボランティアなどをしてもらう世界的ネットワーク「WWOOF(ウーフ)」のホストを行っていることから、西尾さん宅にはさまざまな国の人たちがホームステイ。異国の文化に触れたことで刺激を受け、「自分の目で世界を見てみたい」と思うようになった。

その後、県のプロジェクト(上限50万円を補助)を知って応募し、書類と面接、プレゼンテーションなど2度の審査を通過し、プロジェクトに合格。海外に行って現地の人たちと交流するならば、特産の黒大豆のことを紹介しようと考えた。現在、WWOOFで西尾さん宅に滞在中のフランス人、ナタン・ラザフィマナンツさん(27)の実家がホームステイ先として協力してもらえることになった。

西尾さんは、「黒大豆は丹波篠山の大きな魅力だけれど、一番好きなところは、人柄が良いところ」と言い、「あいさつをしたら返してくれるし、通学途中に自転車がパンクしたときも助けてくれた。黒大豆を通して、丹波篠山のPRにつながったらうれしいし、今回の活動を通して丹波篠山を知ったフランスの人が訪れてくれたら面白い。学びを地元にも還元できれば」と話している。

関連記事