戦国武将「赤井直正」の小説出版 歴史ミステリー「黒井城燃ゆ」 作家の瞬那浩人さん

2025.10.07
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赤井(荻野)直正を主人公にした歴史ミステリー「黒井城燃ゆ」を上梓した瞬那さん=兵庫県丹波市春日町黒井で

ミステリー作家の瞬那浩人さん(65)=兵庫県丹波市=が、戦国時代の黒井城の戦いを題材にした歴史ミステリー小説「黒井城燃ゆ」を、自身が代表を務める同人サークル、SHS企画から出版した。城主・赤井(荻野)悪右衛門直正を幼少期から描き、丹波国平定戦の局面の一つ、明智光秀との合戦をミステリー仕掛けで書き上げた。黒井城の戦いが、後の「本能寺の変」の伏線になっていると設定し、ストーリーに組み込んだ。

赤井家の居城、後屋城(氷上町新郷)で赤井時家の次男として生まれた直正の成長ストーリーを中心に描いた。幼少期は乱暴な振る舞いをしていた直正が、朝日城(春日町朝日)に拠る荻野氏の猶子になり、時に苦悩し、自戒の念を持ちながらも自らの正義を信じ、黒井城主として躍動していくという物語。大まかに史実をなぞりつつ、オリジナルキャラクターを登場させるなど、人間ドラマを中心に楽しめるよう創作した。

執筆に向け、調べるほどに反戦への祈りがこみ上げたという。ウクライナ戦争の終結が見通せない折、「不幸になる人が必ずいるのに、なぜ人は戦争をするのか。戦争をする意味を考えてほしいという思いを込めた。勇ましいだけの戦記物にしたくなかった」と語る。

西宮市から、父の実家がある丹波市に移住して5年。これまでに6作品を上梓し、地域住民から黒井城や赤井直正を題材にした小説執筆を勧められていたという。「歴史に深い関心がなかったが、史実や逸話をつなぎ合わせ、そこにオリジナリティーを盛り込んでいく作業が楽しかった」と振り返る。

150ページほどと読みやすい分量。難解な漢字には読み仮名を振り、合戦シーンなどで残虐な表現は盛り込まず、「小学4年生くらいから読めるように気を配った」(瞬那さん)。

市観光協会に本作を寄贈し、同協会は市内の小中学校と図書館に1冊ずつ配布する。同協会は「『悪右衛門らーめん』を開発するなど、黒井城跡を生かした観光活性化に力を入れている。子どもたちをはじめ地元の方々に、赤井直正の人物像により親しんでいただきたいという思いで協力する」としている。

オンラインストア「アマゾン」で購入できる。単行本(税別1300円、送料込み)。電子書籍もある。

天正年間、織田信長の命を受けた明智光秀が、丹波攻めを繰り広げた。同3年、丹波国に覇を唱えていた直正との戦いでは、直正が光秀軍を挟み撃ちにする戦法「赤井の呼び込み戦法」を展開し、光秀は敗走。この作戦は、同県丹波篠山市の八上城主・波多野秀治が赤井方に寝返ったことに起因するともいわれ、直正と秀治との間にかねてからの密約があった可能性もあるという。光秀は同6年、再び黒井城を攻め、直正を病で失っていた赤井方は敗れ、黒井城は落城した。

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