兵庫県丹波市山南町の久下PTA(浅葉喜一会長)はこのほど、久下小学校で人権学習講演会を開き、トランスジェンダーの今西千尋さん(59)=京都市=をゲストに招いた。今西さんは「自分らしく生きる・性別変更と家族の絆」と題して体験を語り、4―6年生55人と教員、保護者らが耳を傾けた。朝日放送のテレビ番組で密着取材を受けた家族のドキュメンタリーを上映しながら思いを伝えた。
今西さんは、2児の父となっていた結婚10年目に、体と心の性別が一致しないトランスジェンダーであることを妻に打ち明けた。2012年に性同一性障害の診断を受け、協議離婚。性別適合手術を受けた。18年に元妻を養女として養子縁組を行い、現在は再び家族として暮らしている。
トランスジェンダーであると伝えたことで、「いったんは家族の絆が壊れてしまった」と今西さん。妻、息子、娘は精神的に不安定になったり、不登校になったりしたという。しかし、会話は途切れたことがなかったとし、「家族の中で起こった問題として、みんなで真正面から向き合えた。どの家族も順風満帆ではないと思うが、向き合うことが大切なんだろうと思う」と話した。
人生の途中で性別を変えたことで、社会生活で“壁”を感じた経験も。通っていた着付教室で「元男性の方と一緒にお稽古するのは抵抗がある」と言われた時、個人レッスンにしてくれた先生に「どちらも排除しない解決方法だった」と感謝。「法律で体や戸籍の性別を変えても、元男性ということを生理的に受け付けない人もいる。相手の気持ちを大切にし、他に手段がないかを考えるようにしている。ただ、トイレは一番大きな問題で、なるべく多目的トイレを使うが、女性用トイレを使うこともある」と苦労を話した。
今西さんは差別を受けたこともあり、「こういう生き方をしたいという人の背中をすっと押すことはできない。ただ、隠し事をずっと抱えて暮らしていたので、今は自分をさらけ出すことができて良かったと思う。親に言われたのではなく、自分で決めてここまできた。自分自身で選択することを繰り返しながら、生き方を表現していってもらえたら」とエールを送った。


























