施主と施工で建築費削減 古民家改修で実証実験 好結果ならば広く提案へ

2025.11.26
丹波篠山市地域注目

大工の石田さん(奥)の指導でリズム良くかなづちを振るい、フローリングの板をくぎで留めていく伊納さん(手前)ら=丹波篠山市黒田で

昨今の円安などで建築費が上昇を続ける中、兵庫県丹波篠山市本郷の中井工務店(中井雅人社長)は、同市黒田で手がけている古民家のリフォームを、施主やその仲間と一緒に進めることで建築費を削減できないか実証実験を行っている。施主の伊納布弥子さんの「建築費を少しでも安く抑えたい」「わが家の改修に携わってみたい」との声に応えた。「素人の方でも簡単な工程であれば、大勢で取りかかれば戦力になる」。そう踏んだ同工務店の中井社長(50)は、「お客さんから同様の声を頻繁に聞くようになっている。伊納さんらに手伝ってもらっていることで建築費を1割以上削れそう。この取り組みが好結果につながれば、今後、このような建て方もできますよ、と広く提案していきたい」と話している。

築100年を超えるという古民家のリフォームは10月上旬から着手。2月末の完成を目指している。伊納さんとその仲間17人が2週間に1回程度、代わる代わるやって来て、プロの職人に交じって汗を流している。

15日の作業には伊納さんとその家族、友人知人計9人が集まった。同工務店の専属大工、石田二郎さん(49)の指導のもと、紙やすりで梁を磨いたり、フローリングを張ったりする作業に精を出した。これまでにも解体や床の下地張り、壁の下地塗りなども体験してきた。

これまでから、「建築費を下げたいのでDIYで家を建てられないか」といった相談がたくさん寄せられていたが、中井社長は、「家は、人の財産と生命を守る重要な建物。もしものことがあってはいけないと、全てプロの手で仕上げるという考えで断ってきた」と話す。

しかし、近年の物価高、人件費上昇などを受け、建築費も上がっているため、新築を希望していても予算オーバーでリフォームに切り替えたり、新築、改修自体を諦めたりするケースが増えているという。「建築を断念せざるを得ない人に何か良い提案をすることができないか」と模索していたところに伊納さんの相談が来た。

伊納さんは、「自分たちの手があちらこちらに入っているので、この家に対する思い入れが一層強くなっている。大工さんが黙々と作業を進められた方が絶対に早く終わるのに、私たち素人に丁寧に指導してくださり感謝の気持ちでいっぱい」とほほ笑み、「いつも仲間とにぎやかに楽しく作業ができている。完成後も仲間が気軽に集い、わいわいできる家にしていきたい」と笑顔を見せていた。

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