
荒々しく素材感丸出し
大阪市で印刷所を営みながら、7月から丹波篠山の民家を改装した工房「篠山製紙所」で身近な草木を原料にした「手すき紙」を作っている。コウゾ、ミツマタ、ガンピといった和紙の三大原料ではなく、イネワラ、ムギワラ、幼竹の皮、イチョウの葉、最近では黒豆の茎の表皮にも挑戦。「荒々しく素材感丸出しなところが魅力」と話す。
宝塚市出身。大学卒業後、製紙メーカー神崎製紙に入社。後に王子製紙と合併し、東京本社で物流計画や生産調整を担当した。6年間勤務し、1997年に家業の印刷所(3代目)に入社。父の死去に伴い、2003年から社長を継いだ。
「製紙に携わってきたが、紙が出来る瞬間を見たことがなかった。知識としては知っていたが、本質は理解していなかった。和紙は日本の伝統工芸。もっと学びたい」と、曾祖父の出身地・岐阜で美濃和紙づくりを体験。その面白さに魅了された。「水に溶けた繊維が紙になる。その変化が面白い」と、越前や土佐、西宮名塩など産地巡りを重ね、道具も少しずつ整備。原料を煮る鍋も徐々に大型にした。
自宅や工場の片隅で製作してきたが、「作った紙を世に出したい」と量産化を見越し、理想の物件と人との縁で丹波篠山市に。生産量の見通しが立ち、「ささやま紙」の名で商品開発と販路を模索中。紙だけでなく照明、がま口、印鑑ケースなども製作。10月には「王地山クラフトマーケット」に初出店し、11月23日の丹波篠山春日神社「直会(なおらい)市」にも出店予定。「かつて篠山でも紙が作られていた。手すき文化でにぎわいを取り戻したい」と語る。57歳。


























