”幽霊”に囲まれ「守られています」 収集しては表具し直し

2018.08.17
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幽霊画に囲まれて過ごす炭野さん=2018年8月8日午後1時32分、兵庫県丹波市柏原町柏原で

おどろおどろしい幽霊を描いた掛け軸「幽霊画」のコレクターとして知られ、兵庫県丹波市柏原町柏原で表具店を営む炭野誠さん(55)。毎年、夏になると、仕事場に設けた小さな展示スペースに幽霊画の掛け軸をかけ、幽霊に見守られながら仕事をする。「別に恐くないですよ。生きている人間の方がよほど恐い」とか。

もともと骨董好きの炭野さん。30年ほど前、知り合いの骨董屋から「こんなん、あるんやけど」と幽霊画の掛け軸を紹介されたのが、収集の始まりだった。ずいぶん傷んだ掛け軸だったが、炭野さんは表具師。本職の腕前で掛け軸を直した。

これまでに収集した幽霊画は16本。柳の下で生首を口にくわえている幽霊、落語家の三遊亭円朝の名作「怪談 牡丹燈篭」に出てくる「お露」の幽霊、草むらに転がったドクロから現れ出た女性の幽霊、無残にも顔の相が崩れた女性の幽霊のほかに、15人の骸骨がお茶をたてたり、琴を奏でたりしているなど、どことなくユーモラスな作品もある。

子どもの頃から体が弱く、学校も休みがちだった炭野さんだが、幽霊画を収集するようになってから病気とは無縁になったという。「傷んだ幽霊画を購入することが多く、それらを表具し直して生き返らせているのだから、恨まれる筋合いはない。むしろ守ってくれていると思う。丈夫になったのも、そのためでしょう」とほほえむ。

炭野さんによると、幽霊画はもともと子どもらを説教するために使われたそう。お寺のお坊さんらが子どもに幽霊画を見せて、人に恨みを買うような悪事をしてはいけない、人には優しくしなければいけないことを教えた。明治時代になって、落語で幽霊の話がはやり出した。

落語で幽霊を語るとき、小道具として幽霊画が使われ、幽霊画が人気を呼ぶようになった。炭野さんが持っている幽霊画も明治時代以降に描かれたものだという。

収集を始めた頃は、幽霊画の値は安く、数千円で買えたそう。しかし、今ではコレクターが増えて値が上がり、入手するのが難しくなっているという。

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