写真・拝殿の向拝中央の竜(写真1)、伊尼神社の大鳥居(写真2)
県道109号線で新郷集落を白山の麓に向かって、西に辿ると、鬱蒼たる神社林の中に伊尼神社が佇んでいる。大きな石の鳥居を潜り、巨木の間の参道を経て、広い境内を通り、石段を少し上がった所に、春日造銅板葺きの拝殿に着く。
創建は欽明天皇朝(6世紀、530年代)で、丹波地方でも、抜きんでた古社の一つである。また、延喜式神名帳にも出ている式内社でもある。祭神は、瓊瓊杵尊。古来より、領主並びに武将の尊崇が篤く、現在の拝殿は太平洋戦争の始まる前の昭和16年10月に改築された。向拝中央の目抜きに、竜の姿が見える。頭を左前方に向け、髭は長い銅線を用い、“いらか”と舌はピンと立ち上がっているが宝珠は小さく、竜の頭の下である。先代の宮司によれば、この彫り物は、五代目中井正忠の相方、久須善兵衛政精の19世紀初頭の作品らしい。小振りだが趣のある秀作である。
中井権次研究家 岸名経夫
(写真1)
(写真2)