人口減少や高齢化が進む中、「空き家」が増えている。地方では野生動物の住み家になったり、老朽化すると倒壊の恐れもあり、周辺への悪影響もある。「空き家活用」は地方にとって悩ましい問題の一つだが、兵庫県内陸部にある丹波市春日町柚津の空き家を活用し、飲食をメーンに据えた地域おこしの場をつくろうという動きが進んでいる。
合同会社「丹波地域活性協議会」(LOCASSE TAMBA)が、地域住民とともに改修工事を進めている。母屋で珍しい豆を使った和菓子の開発、加工販売を行うほか、敷地内に直営の飲食店に加え、パン店やバーベキュー料理店なども開店する予定。段階的に開店し、来春のグランドオープンを目指す。
敷地内には築50年ほどの2階建て母屋のほか、旧鶏舎、農地などがあり、5000平方メートルほどを開発している。
母屋前の農地で、豆「茶っころ姫」を栽培し、それを原料にした和菓子「ちゃっころ餅」を開発する。「茶っころ姫」は、「丹波黒」と山形県庄内地方特産の「だだちゃ豆」を掛け合わせた品種。母屋に加工、飲食スペースをつくって提供する。
敷地内に設置したコンテナ内にパンとコーヒーの店が入る。新築する建物にバーベキュー料理店がオープン予定で、いずれも常設。田舎で店を開きたいという人のために、「お試し開店」するチャレンジショップのスペースも設ける。
2棟ある旧鶏舎も活用。1棟は改装し、セミナーや茶華道、ヨガなどの教室が開ける「カルチャーセンター」。もう1棟は趣きを残したまま使用し、同社直営の飲食店にする。アルコールや一品料理を提供するほか、他店の出店を募ってイベントを開催する計画を立てている。
同社代表は清水浩美さん(56)。役員を務めるIT関連企業でインターネット販売で無農薬野菜を扱おうと、「市島製パン研究所」(丹波市市島町喜多)を経営する幼馴染の三澤孝夫さん(57)に相談。紹介してもらった丹波市の農家から「茶っころ姫」の存在を聞き、興味を持った。
無類の甘党という清水さんは、奈良県の有名な餅「中将餅」などにヒントを得て、「茶っころ姫」を使った新しい和菓子の開発を検討。四国で民泊施設を運営しており、ノウハウを生かして空き家を活用することにし、三澤さんを含めた仲間4人で同社を立ち上げた。
豆の栽培や餅加工、販売などは地域住民に担ってもらいたい意向で、雇用も生み出す。近隣で宿泊できる施設の確保もめざしている。
英語表記の社名「LOCASSE TAMBA」は造語。「ローカル」と「活性」をかけているという。三澤さんは「お客との縁をつくる場にしたい。グルメだけでなく、丹波の文化も発信し、さまざまな体験ができるようにしたい。地元の人が持つ知識や技術を生かせるようにし、気軽に訪れてもらえるようにしたい」と話す。清水さんは、「地域の人を含め、多くの人が集う場にしたい。地域の魅力を再発見し、丹波の良いものに改めて光を当てる場にできれば」と話している。