国際市場の最前線で
外国為替トレーダー 畑 克利 (はた かつとし) さん (東京都在住)
1963年 (昭和38年) 京都府生まれ。 幼い頃父の郷里篠山へ。 篠山鳳鳴高校、 立教大学経済学部卒業。 丹波市出身の上田元彦氏がオーナーの上田短資に入社し、 系列の外為ブローカー・上田ハーロー (現トウキョウフォレックス上田ハーロー) でトレーダーの道を歩む。 今年5月からユーロの担当に。 スポットFX部他通貨セクション部長代理。
為替の大幅変動がテレビのニュースになる時、 円相場の電子表示板をバックに、 受話器を手に男性たちが円いテーブルを囲む場面が必ず写しだされる。「東京外為市場」の最前線。 ここが畑さんの職場だ。 世界中からひっきりなしに電話が入り、 英語で取引を進めていく。 スピードの速いやり取り、 瞬時の判断での売り買い。 1日に何百億円もの金額を動かす。
スニーカーにオープンシャツの軽装。 まるでゲームの世界に迷い込んだようだ。 「ゼロサムゲームとよばれるように、 世界の一定量のマネーを動かすことによって、 誰かが儲けたら誰かが損をする」 という非情な世界。 「駆け引きの様々なテクニックもあるようですね。 日本人の顧客はまだまだおっとりしていますが」。
10年ほど前、 テレビで仕事の内容を説明したことがある。 その頃は収益が安定していて、 それほど非情とは思っていなかったが、 6年前、 外資との合併を機に環境が大きく変わった。 終身雇用だった前の会社を一旦退社する形で新会社に雇用され、 給料は成果主義による年俸制に。 年次さえ上がれば昇給するのでなく、 会社の収益への貢献度によって変動する。 アメリカのハリケーンを始め、 内外のさまざまな出来事がマーケットを激しく動かすので、 緊張が解けない。 「今日はちょうど年俸制の契約が終わり、 ちょっと上がりました」 と、 ほっとした表情に。
中学生のとき、 得意だった英語の青木先生が外国の話をよくしてくれ、 「国際舞台で働きたい」 とあこがれた。 金融マーケットの最先端の仕事に就いたが、 「どんな仕事でも、 傍から見るほど華やかではなく、 地道な努力が必要だとわかりました」 としみじみ。
(上 高子)