顔の見える図書館を
太子町立図書館長 小寺 啓章 (こでら ひろあき) さん (揖保郡太子町在住)
1946年 (昭和21年) 丹波市青垣町東芦田生まれ。 大阪市大文学部卒。 広告代理店、 龍野市立図書館司書を経て83年から現職。
姫路市の近郊、 太子町立図書館長として、 住民と職員が互いに顔の見える図書館作りが各地から注目を集める。
「図書館を住民に身近な場にするためには、 来館者へのきめ細かなサービスが不可欠。 『この人はこういう本が好き』 と事前に把握しておき、 新刊を入庫した時に勧めれば、 喜んでもらえます。 住民との会話を大切にし、 声をかけてもらえるような職員に」 と話す。
子供に対するサービスでは、 1976年から小学校や幼稚園に出向いて開いてきた、 お話会。 これは、 全国の公立図書館で最も早かった。 その後、 小学校には 「図書館の時間」 が導入され、 子どもが本に親しむ土壌ができた。 「図書館の運営は30年くらいの長いスパンで考えないと。 町外にいた人がUターンし、 子供の頃を思い出し再び利用する傾向もあります。 都会の図書館の真似でなく、 地道にその町にあった取り組みが大切」 と力説する。
中学1年まで青垣町で暮らす。 その後、 家族と一緒に大阪へ。
「72年に城跡にある龍野市立図書館に勤務しましたが、 廃校になった校舎の一部を活用しているような状態。 新しい建物が建つと、 周辺の町にも図書館を作ろうという住民の要望が広がりました」
県内外の図書館建築設計、 レイアウトにも携わった。 氷上町立図書館 (現在の丹波市立中央図書館) もその一つ。 入り口付近の書架の高さを低くするなど利用者中心の設計に気を配ったという。 「4000万円で図書館ができる」 というのが持論。 「空き店舗をうまく活用し、 一戸建ての家を新築するのと変わらない値段で設計、増改築、 書架の設置、 1万5000冊の新刊購入が可能。 計画のアドバイスをしますよ」 と意欲。
「少年時代を過ごした故郷が私の生活の原点。 本が少ない時代のなかで、 雑誌などをむさぼり読みました。 田舎暮らしが長く続いているのも、 その影響だと思います」
(臼井 学)