ゾイジーン研究員 渕上喜弘 (ふちがみ よしひろ) さん

2003.09.18
たんばのひと

たんぱく質を研究
ゾイジーン研究員 渕上喜弘 (ふちがみ よしひろ) さん (神奈川県横浜市在住)
 
1969年 (昭和44年) 市島町生まれ。 柏原高校、 岡山理科大理学部卒。 同修士課程修了。 京都大学農学部博士課程修了。 2年間のポストドクターの後、 2000年三菱化学『研究員として就職。 02年ゾイジーン』発足のため移籍、 現在に至る。 農学博士。
 
 三菱化学グループに属する、 ゾイジーン (生命遺伝子の造語) 社は、 生命科学研究を基に、 医薬品の候補となる化合物の発見や、 病気の原因となるたんぱく質の研究結果を、 ライセンス営業する情報ビジネスの会社である。 渕上さんは、 「フラスコやシャーレに囲まれ、 毎日試験管を振って」、 たんぱく質を合成する仕事をしている。
「いままでの薬は、 多量にのまないと病気の部位に届かないのですが、 ここでは病んだたんぱく質の形にぴったり合う化合物を見つけ出すのです」。 それがいずれは個人のタイプにまで及ぶ時代が来るという。
 大学の研究室と、 企業の違いには最初戸惑いがあった。 「生産性を求められますから。 コスト意識も必要ですし」。 それでも最近は自分のとらえ方次第だと思うようになった。 「小さなことでも、 目の前にあることを確実にやることが大切」 と話す。
 たんぱく質の連なりでできている人体と生命の謎には、 「いずれ科学で説明がつくでしょうけど、 何億年もかかってここまできたのだから、 謎解きをクローンのように一気に再現しようとすることはリスクが大きすぎる」 と思うそうだ。
 一人っ子なので、 当然地元で公務員になるのだろうと思っていたが、 高校3年生のとき進路に迷って祖父に話したら、 「好きなことをやれ」 というメッセージを受けた。 そのころ、 テレビで小児がんのドキュメンタリーを観て、 がんを治す研究をしたいと、 当時、 基礎理学科がある唯一の大学、 岡山理科大へ進学した。
 子どものころ気づかなかった丹波のよさを、 つくづく感じる。 「こないだ帰郷したときの稲のたなびきには心がなごみました」。 嫌いだったものでさえ、 懐かしい。 「べちゃべちゃした新米。 夏のトマト」。 笑顔がはにかんでいた。
(上 高子)

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