原発の関心広げたい
(まつい さくお)赤穂郡上郡町在住
1949年 (昭和24) 丹波市氷上町横田生まれ。 柏原高校、 大阪大学理学部物理学科卒。 民間会社に8年半勤務のあと、 広島大学大学院で博士号を取得。 理化学研究所と高輝度光科学研究センターで研究員を25年つとめた。
大型放射光施設 「スプリング―8」 (佐用町) で、 放射光を生み出す加速器の性能向上に取り組んでいる。
電子を光の速度近くまで加速し磁石で曲げた時に発生する放射光は、 生命科学など幅広く活用されている。 「多くの測定や計算から加速器の振動源を追求し、 より安定な光の供給を実現できた。 日本海の波の振動で加速器が歪み、 海の荒れ具合もわかった」 という。
広島大学院で核物理を専攻し、 原発にも関心を持つ。 在学時、 被爆者の話も聞いた。 核反応のエネルギーは、 燃焼のような化学反応とは全く違い、 透過力が強い。 絶えず細胞の新陳代謝を繰り返す人間にとって、 細胞が新しくなる時に、 多量に放射線を浴びると、 悪影響を及ぼすという。
「原発1基中のセシウム137 (放射性物質) を近畿全域にまくと人が全く住めなくなる。 核は医療や工業計測など熱エネルギーを取り出さない方法で利用すべき」 と語る。
さらに、 「福島第一原発事故で、 安全性に疑問符がついた。 原発の多いアメリカ東部、 フランス、 ドイツでは地震は数少ないが、 日本は地震大国。 原発の安全性は保てない」 と強調し、 自然エネルギーの方向性を探る。
「福井県の高浜原発と丹波市との距離は、 福島第一原発と福島市の距離に相当する。 常に危険性を認識しておきたい」。
小学生のころは、 天文少年。 天体望遠鏡を手づくりするなど、 宇宙の神秘に魅せられ、 高校では天文班に所属した。 最近、 小学生に科学の面白さを伝える講師も引き受けた。「科学の利便性だけでなく、 危険性も考える子供に」 と願う。 「住んでいる所は、岡山県境。同級生も少ない。 高校の阪神支部の同窓会に出席し、 ネットワークが広がった」 と笑顔。