兵庫県丹波市青垣町佐治の表具店「太田檜雲堂」(太田嘉久さん経営)内のギャラリーで、「書画で辿る丹波偉人伝」が開かれている。丹波市出身や、丹波市にゆかりのある文化人や政治家、宗教家など各界の人物たちが遺した書画の掛け軸などを展示。約40平方メートルのこぢんまりしたギャラリーながら、内容は多岐にわたり、見ごたえのある展示になっている。8月18日まで。
書画の作者は15人。▽郷土史家の松井拳堂▽俳人の田ステ女▽俳人の細見綾子▽細見綾子に俳句を作るよう勧めた医師の田村菁斎▽日本画家の常岡文亀▽仏教史学者の村上専精▽俳人の西山泊雲と野村泊月の兄弟▽泊雲と親交のあった日本画家の小川芋銭▽青垣町の高源寺を復興した弘巌上人▽元内閣総理大臣の芦田均▽曹洞宗の高僧、澤木興道▽儒学者の小島省斎▽逓信大臣や台湾総督などを務めた田健治郎▽医師で儒学者の植木環山―。丹波市内の収集家から借りた書画が中心。
細見綾子と田村菁斎は、それぞれの俳句の短冊を並べ、1本の掛け軸にしたもの。市島町の石像寺で長期間、逗留し制作に励んだことがある小川芋銭は、真骨頂でもある河童の絵。氷上町の円通寺や、石像寺にゆかりのある澤木興道の作品は、禅における書画の一つと言われる「円相」。芦田均は、ジャーナリストで文学者の長谷川如是閑に宛てた書簡。弘巌上人は「寒山拾得図」。東京帝国大学の教授でもあった村上専精は、「守愚」と書かれた掛け軸―と、多彩な内容。書画のほかに2代目磯尾柏里の木彫や、陶芸などもある。
太田さんは4代目。2代目の祖父は、達磨図でも知られた松井拳堂や、細見綾子、泊雲・泊月兄弟らと表具の仕事を通した面識があり、太田さんもこれまで拳堂や綾子らの書の表具を手がけたという。
「丹波が輩出した人物を知ってもらいたく、展示会を企画した」と太田さん。「同時に、掛け軸などを手がける表具の仕事を知ってもらう入り口になれば」と話している。
午後1時―同8時。火・水曜日休み。入場無料。同店(TEL0795・87・1639)。今後も丹波にゆかりのある人物の書画などを集めた展示会を開くという。