全妊婦に専属助産師をつける「My助産師ケアセンター」(仮称)を8月から立ち上げる方針の兵庫県丹波篠山市は、妊産婦のケアに当たる専用の新施設について、「宿泊型の産後ケア」の実施を見込み、入所できる個室の整備を想定していることを明らかにした。来秋の完成を目指しており、建設場所は同市網掛の丹南健康福祉センターの駐車場内などが候補地。4日に開かれた市議会予算決算委員会民生福祉分科会などで報告した。
同市の宿泊型産後ケアは、生後4カ月未満の母子が入所でき、最大で7日、1泊2000円で利用できる。現在、市内の産科医院1カ所に委託している。
分科会に提出した計画の素案では、新施設は2階建てで延べ床面積約300平方メートル。診察室や個室、新生児室兼沐浴スペース、シャワールームなどを備える。平屋での建設も可能とする一方、将来的に宿泊型産後ケアを実施する場合は、セキュリティーの関係上、「2階建てが望ましい」とした。具体的な設計は予算通過後に行うため、あくまで現時点での素案。
建築費は概算で1億2000万円程度を見込む。うち2分の1は国庫補助金を活用し、残りをふるさと納税の基金など市の自己財源でまかなう想定。
運営上のランニングコストは、助産師の人件費や光熱水費などを含めて年間約2000万円と試算。日帰りや宿泊型の産後ケアによる収入は年間51万円を見込む。助産師の人件費には国・県の補助金があることから、必要経費は年間約1400万円になるという。
新施設の供用開始までは丹南健康福祉センターを拠点に、助産師3人体制で市内全妊婦に対して相談や保健指導、産後の訪問などを行う。
開会中の市議会に提案している今年度補正予算案は、事業拡充のために助産師2人を増員することに伴う人件費約445万円と、新施設の設計費約1000万円。
2日に開かれた本会議では施設建設を巡って質疑があり、議員からは「妊産婦ケアの重要性は理解できるが、ハコモノを建設することには疑問がある」「公共施設の統廃合が検討される中、既存施設を改修して使用するべき」といった意見や、「施設の全体像が見えない中で、設計費を計上してくるのはおかしい」などの指摘があった。
分科会でも、My助産師という制度は、「非常に良い」と評価する声があった一方で、施設については、「必要性があるのか」「医療機関との連携はどうなっているのか」などの意見が出た。
市保健福祉部は、「既存施設の活用も検討したが、費用面、安全性、利便性、医療施設的な側面もあることから、総合的に判断した結果、新設が最も良いと考えた。健康課などとの連携が密にでき、一体的に事務を行えるため、丹南健康福祉センターの近くを候補にしている」と説明。さらに「産科医からも、病院では手薄な産後ケアは市でお願いしたいとも聞いており、今後も連携しながら取り組んでいく」「宿泊型の産後ケアも行うことで、大変な思いをしている妊産婦のセーフティーネットとして市がきちんと対応することで、『女性を大切にしているまち』と思ってもらえる」と理解を求めた。
酒井隆明市長は、「兵庫医科大学ささやま医療センターの分娩休止が判明し、検討を始めて1年以上が過ぎているため、できるだけ早く対応したい。ソフト事業だけでなく、きちんとしたケアが受けられる施設がないと、市民の理解が得られない」とし、「分娩できる施設が市内で1カ所になったことは若い世代の定着にとって大きなマイナス。せめて、出産される方に最大の配慮をしていくことが市の責任」とした。
同補正予算案は16日の予算決算委員会全体会をへて、25日の本会議で採決される。