兵庫県丹波市の柏原高校ワンダーフォーゲル部(30人)が、8月22日夜から同23日早朝にかけて、同校をスタート地点に夜通し歩き、約70キロメートル離れた京都府宮津市の由良海岸を目指す伝統行事「夜間歩行」を行った。今年の志願者は2年生の男子部員7人。新型コロナウイルスの影響で、島合宿、総体、六甲縦走、北アルプス合宿などの恒例行事がことごとく中止となり、日々の練習への目標を失いそうになっていた部員たち。7人は、チャレンジできる喜びをかみしめつつも、限界を超える苦しい行程にあえぎながら歩みを進め、見事全員そろってゴールを果たした。
1969年から始まった夜間歩行。96年から2014年までの一時期途絶えたが、15年に20年ぶりに復活し、以後、毎年実施している。
飲み物や行動食を携えた7人は、午後7時に同校を出発。本州一標高の低い中央分水界「水分れ」(丹波市氷上町石生)、由良川沿いを通って、翌朝の7時までにゴールするという目標を掲げ、由良海岸を目指した。
道のりの途中では、引退した3年生や夜間歩行に参加しなかった部員たちが応援に駆け付け、7人を鼓舞した。
民家のないエリアでは、スマートフォンで音楽をかけたり、歌ったりして仲間同士で励まし合った。しかし徐々にペースダウン。休憩しても再び歩き出すときに足に激痛が走るため、ゆっくりとした休息もままならなかった。
ゴールまであと約20キロ地点の舞鶴市に入った辺りで、「7時に間に合わない」とランニングを開始。足の痛みに襲われるたびに「俺ならできる」「俺はすごい奴」と自ら暗示をかけて走り続けたという。
ゴール地点間近、隊列は崩れていたが、先に到着したメンバーは「みんなと一緒にゴールしたい」と後続を待ち、7人そろったところで手をつなぎ、午前7時ちょうどで由良海岸の砂を踏んだ。
部長の和田稜平君は、「もう体力気力共にぎりぎりだった。でも、『やり切ったんだ』という充実感が味わえ、自分に自信がついた」とほほ笑み、「コロナ禍の中でも、先生たちの『できる限りのことをさせてやりたい』という思いも僕たちに伝わっていたので頑張ることができた」と振り返った。
部員の山本暖太君は、「途中、遅れを取り、『もうあかん』とネガティブになったが、『みんなとゴールがしたい』という思いで踏ん張れた。達成感でいっぱい」と笑った。
顧問の辻野彰一教諭は、「限界を超えたところからが、この行事の醍醐味。いつでもリタイヤできるのにしなかった気持ちは、今後の人生にきっと生きてくる」と部員たちをねぎらっていた。